はじめに

「お元気ですか?」

という問いに、

「まあ、現状に満足しなくてはいけませんね。」

と答える人が多い。それは、現状に対する無条件降伏のように思える。本来なら「満足」とは最高の状態であるべきなのに。

今日、多くの人が日常生活を送る中で、最高の物を求めている。もっと金を、もっと幸福を。また、世の中には、人々に幸福を提供することを謳った製品が溢れている。しかし、それを使った人は本当に幸福になれるのだろうか。それらを使っても幸福が得られることは稀である。つまり、幸福を追い求めて、それが失望につながることも多い。

一方満足はどうだろうか。高望みをしない現実的な計画に従い、実現可能なものを追い求めるほうが、信頼度は高い。幸福よりも、満足を追求する方が、安定していて、持続性がある。満足は、思考の過程から生まれる。

満足は、自分の作った基準、理想との比較に依存する。理想と現実を比べその差が小さいほど満足度が高い。満足を求める方法として、積極的なやり方と、受動的なやり方がある。出来事をあるがままに起こさせ、そこから満足を得るという受動的なやり方は難しい。しかし、積極的なより方は、満足を得ても、次の目標が待っている。失敗する確率も高い。古代ギリシアのストア派や、仏教などの東洋の宗教は、あるがままにさせることが満足への道だと説いている。しかし、何もしないでも満足がやってくるわけではない。満足を得る方法、それは学んで初めて身につくものである。