クールな体験、保津川下り

 

二時間待って出発。美しい風景を堪能することが出来た。ちなみにお値段は四千円。

 

再び閑話休題。十月七日の同窓会には、僕の他にもう一人海外からの参加者があった。ロサンゼルスから来られた女性Iさんである。Iさんとは、海外在住ということで波長も合い、共通の背景もあり、毎週のようにメールを遣り取りする他、二度ロサンゼルスの彼女を訪れたこともあった。平たく言えばふたりは仲良しなのだ。これまで同窓会に出るときも、

「次回は一緒に出ようぜ。」

と申し合わせ、一緒に同窓会に出ていた。その際、京都で個人的にも会ってもきた。今回、Iさんは息子さんと一緒に日本に来られたので、三人で「保津川下り」をすることになった。二十歳代の息子さんがおられるので、古跡旧跡巡りより、体験型観光の方が良いだろうと思って。実際息子さんのB君は、「ホズ・リバー・ボート・ライド」を楽しんでおられた。

同窓会の翌日、午前十一時にJR円町駅で僕は、IさんとB君と待ち合わせ、山陰線の電車で亀岡へ向かった。保津川下りは亀岡から京都の嵐山まで十七キロを約二時間かけ、小さな和船で急流を下る。保津川は、丹波地方に水源を発し京都嵐山まで流れ、そこから桂川と名前を変え、木津川、鴨川と合流し、淀川となり大阪湾に注ぐ川。亀岡から嵐山は、深いV字谷の底を流れる急流となり、そこで川下りが行われているのである。今ではアトラクションだが、鉄道開通までは、丹波産の材木を筏に組んで京都に送ったり、京都の物品を丹波に送ったりする、水運を担っていたのだ。その鉄道であるが、昔は嵯峨から亀岡まで、谷に貼り付くように単線の山陰線の線路が付いていた。二十年ほど前、嵯峨、亀岡間には新しいトンネルが掘られ、複線電化された。旧線はトロッコ列車として今も残っている。

十五分ほどで亀岡に着き、駅から歩いて十分ほどの船乗り場に向かう。十月としては異例の暖かい日、気温は三十度ほどあり、IさんもB君もTシャツ一枚。数日前に英国から電話をかけ、予約できないか尋ねたところ、

「個人のご予約は承っておりません。十月八日は三連休の真ん中ですので、混み合うことが予想され、お待ちいただく場合があります。」

とのことだった。十二時頃に乗船所に着いて、約二時間待った。嵐山まで一度下った船は、トラックにまとめて数隻積んで亀岡に戻って来る。また船頭さんたちも電車で帰って来る。それが間に合わないのね。やっと船が戻って来たと思ったら、修学旅行の高校生が五、六隻一度に使ったりして。僕らの番号が呼ばれたのは二時前だった。待っている時間Iさんとずっと話していたので全然退屈はしなかったけれど。

 一隻の船に乗る乗客は二十人。その船を四人の船頭さんが操る。竿を持った人が前に発ち、櫂を持った人が二人、最後尾に舵取りが一人。出発して間もなく、船は急流に入っていく。川底は浅いし、岩が出ている。そこを船頭さんが巧みに船を操り進めていく。竿で岩を突いて船の方向を変えるのだが、いつも同じ場所を突くので、そこが窪んでいる。緑の谷を渡る風が嘘のように涼しい。僕は真ん中だったしよかったが、両脇に座ったIさんとB君は飛沫を浴びてかなり濡れていた。物理的にも、比喩的にも「クールな体験」だった。

 

ちょっとジェットコースターに似た体験。船頭さんの話術も面白い。

 

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