海の見える遺跡

青い海と松の緑を背景にした遺跡、向こう岸に見えるのはトルコ。

 

海岸に沿って走ると、カミロスの村に入った。海水浴場になっており、砂浜に沿って数件のタヴェルナがある。村から「アンシャント・カミロス」(古代カミロス)の標識に従って少し山を上がると、そこに遺跡があった。入り口で入場料を払って中へ入ると、ゆるやかな山の斜面に貼りつくように、幅二百メートル、奥行き四百メートルくらいの遺跡が広がっている。

カミロス遺跡は非常に良かった。はっきり言って、超有名なクレタ島のクノッソス宮殿跡よりも数倍良かった。その理由としてふたつが挙げられる。

まず、無駄な手が加えられていないこと。もちろん、埋もれていた遺跡を発掘するのであるから、多少は崩れた石を積み直したりする作業は必要だろう。クノッソスの場合、その修復が完全に行き過ぎの感じがする。その点、このカミロス古代都市は、余り手が加えられておらず、古代の生活に思いを馳せることができる。

第二に、海に面した斜面に立っていること。上から見下ろすと、ベージュ色の石の街が青い海の背景を抱き、そこに松の緑が点在し、本当に絵になる風景だ。クノッソスの場合、内陸にあるので、借景になるものがない。

何枚か写真を撮ったが、石で出来た遺跡は、逆光で撮った方が、石の存在感があると思った。妻と義母は、松の木の下のベンチでサンドイッチを食べている。その後、僕達は二千数百年前の生活の名残を残す石の街と海を見下ろす、丘の頂上に立った。

「きれいねえ。」

妻も義母も感心している。その言葉しか出てこない。

「ロードス島旅行で何処が一番良かったと聞かれたら、ここが一番と言うかも知れない。」

僕はそう思った。

三時にホテルに戻る。例によって妻と僕はプールで泳ぐ。時々プールに入っている人は見かけるが、僕達のようにクロールで真剣に泳いでいる人は誰もいない。その後また二人で一緒に風呂に浸かる。そして、恒例の如く、バーでビールを飲み、腹いっぱい夕食を食べて九時には眠った。

十月十日、今日の日付は「一〇」が三つ並ぶ。六時に起きるがまだ真っ暗。星を見る。辺りに明るい場所がないので星が良く見える。ベランダからはオリオン座。反対側のホテルのテラスからは北極星、北斗七星、カシオペア座が見えた。天の川もきれいだ。

明るくなった七時前にホテルを出て、例の「大リーグボール養成ギブス」をつけ、ロードスシティーまで歩く。今日は休養日、どこへも行かない予定。

朝食後プールサイドで日光浴をする。しかし、日光浴を一時間もすれば飽きてくる。一日中でも日光浴ができるヨーロッパ人にはなりきれない。どうして他のヨーロッパ人の皆さんは、どこにも行かず、一日中日光浴をしていられるのか不思議。日本人は常に何かをしていなければ気がすまない。「貧乏性」なのだろうか。

 

二千数百年前の石の上で当時の生活に思いを馳せる。

 

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