シュッツェンフェスト

 

「ノイス市民シュッツェンフェスト」のポスター。今年は七千人の参加があったという。

 

デュッセルドルフ中央駅に着いたのはちょうど正午である。元同僚で、友人のデートレフが、仕事を終えた後、ノイス駅まで迎えに来てくれるのが午後三時半。それまで三時間ほど時間がある。僕は「日本人街」として知られるイマーマン通りのラーメン屋でラーメンを食べた後、向かい側の「ホテル日航」のカフェテリアで仕事を始めた。本来ならば、金曜日は休暇を取っているので、会社のメールを見る必要はないのだが、僕は休日でも必ず一度は会社のメールをチェックする性分。そのことについて、ドイツ人の友人ふたりと、議論を交わすことになるのだが。

三時前に中央駅に戻り、デートレフの奥さんのために花束を買う。自分で好きな花を選んで作ってもらうというシステムなのだが、これがなかなか難しい。三時過ぎに電車に乗る。デュッセルドルフとノイスはライン河を挟んで対岸の町、十分もかからない。

「旗がたくさんあって、とっても賑々しい雰囲気だね。」

僕はデートレフに言った。彼は僕を三時半に迎えてくれて、僕たちは街の観光を始めたところだった。

「先週『シュッツェンフェスト』があったからね。旗はその名残りなんだ。」

とデートレフは言う。この「シュッツェンフェスト」と言う言葉、これまで何度もデートレフから聞いているが、それが具体的にどんなものであるのか、全く知らなかった。「フェスト」イコール「フェスティヴァル」ということで、何らかのお祭りであることは想像できる。そもそも、僕はこれまで十回以上ノイス市にあるデートレフの家を訪れて、泊めてもらったことが何度もあるが、旧市街を訪れたのは今回が初めてなのだ。

「シュッツェンフェスト」の「シュッツェ」というのはドイツ語で「射手」という意味、

何か弓を射ることに関係があるんだろうな。」

と想像がつく。

「馬の上から矢を撃つ、京都、葵祭の『流鏑馬(やぶさめ)』みたいなものなのだろうか。」

とも考える。しばらく歩くと写真館があった。そこのショーウィンドーの中に、先週の「シュッツェンフェスト」の写真が飾られていた。それを見て、僕はそのお祭りがどんなものであるのか、初めて知った。一種のパレードだったのである。

以下は、英国に戻ってからインターネット百科「ウィキペディア」で調べた内容である。

「ドイツの各都市では、町を外敵から守るために『自衛団』が組織された。その自衛団が、年に一度集まり、行進をするのがシュッツェンフェストである、かつてはそこで、弓の技を競っていた。それで、『シュッツェ』、『射撃、射手』という名前がついた。」

とのことである。写真を見ると、揃いの制服を着たおじさんたちがパレードをしている。そして、このノイスの祭りは特に盛大で、参加者も多く、ドイツ国内でも一、二を争う規模なのだという。

「一種の軍事パレードなんで、軍国主義的だと言って、批判を受けてこともあるんだよね。」

デートレフが言った。

 

パレードの様子。(ドイツのテレビ局ARDのサイトより。)

 

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