英語で話す相手

 

ホームルームの時間が始まる。(ホリケン撮影)

 

同窓会のことを英語では「スクール・リユニオン(school reunion)」 と言う。ロンドンへ戻ってから、ドイツ人の友人のVに、京都で何をしてきたかという話をしていた。そのとき、ドイツ語で「同窓会」という言葉が思い浮かばない。

「英語で『リユニオン』だから、ドイツ語ではそれにあたる『ヴィーダーフェアアイニグング(Wiedervereinigung)』って言うのかな。」

と言うと、Vは笑い出した。

「モト、それは東西ドイツなど、国同士が『統一』されたときに使う言葉だ。大げさすぎるよ。『クラッセントレッフェン(Klassentreffen)』と言うのが普通だね。」

そうなの、「クラッセントレッフェン」つまり「クラス会」。このあたり、持って回った言い方の好きな英国人と、即物的なドイツ人の考え方の違いが分かって面白い。

 ともかく、僕は同窓会での「授業」の後、「ホームルーム」の時間にいた。「ホームルーム」と言っても、缶ビールとつまみで、単に皆が談笑する場なんだけど。僕は「授業」を終えられたS先生と話をしていた。

「先生。僕、今英国で、英語を使って仕事をしてるんですよね。つまり、先生に教えてもらったことで毎日勝負してるんです。感謝してますよ。」

そんな話から始めた。先生は、博物館で英語のガイドをやっておられる。当然、世界中の色々な国からの人々を相手にされているわけだ。僕も、先ほども書いたが、「多国籍軍」の中で働いている。僕のオフィスだけでも、英国人、フィリピン人、中国人、ケニア人、南アフリカ人、インド人、ポルトガル人、イタリア人、パキスタン人、バングラデシュ人の同僚がいた。その上、ドイツやオランダ、ベルギーにも同僚がいる。

そのうち、どの国の人が一番話しやすいかという話になった。

「実際、英語を母国語にする人を相手にするの、苦手なんですよね。どちらかというと、英語を外国語として話す人々の方がやりやすい。」

と先生はおっしゃった。

「分かります。先生、よ〜く分かります。」

僕はS先生に同意する。僕も英国人と英語で話すのは苦手。どうも気おくれしてしまう。オランダ人や、フランス人の同僚と英語で話す方がうんと気が楽。どうせ相手も外国語を話しているんだから、「正しく話そう」という欲を捨て、「とにかく通じればいい」と開き直れるからだ。

オランダなどへ出張に行って、客先などでプレゼンテーションをする。当然英語だ。皆が僕の説明を分かってくれ、商売も上手くいく。そんなとき、

「ああ、僕の英語も捨てたものじゃない。」

と、ちょっと誇らしい気分で英国に帰って来る。ヒースロー空港に着いて、迎えのタクシーに乗る。そうしたら、英国人の運転手の言ってることが、さっぱり理解できないのだ。僕の英語に対する自信と誇りは、そこで脆くも崩れ去るのである。

 

授業を終えられたS先生と話す僕。(ホリケン撮影)

 

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