プロローグ
ある哲学者のもとに、一人の悩める若者が訪れる。哲学者は、ギリシア哲学とともに、ドイツ人のアルフレッド・アドラーの心理学を研究している。若者は哲学者の、「世界は単純な場所である。」という主張を聞いて、興味を持ってやってきたのであった。哲学者の主張は;
�@ 世界は単純である
�A 人間は変われる
�B 誰もが幸せになれる
と言うことであった。
「あなたは、世界は単純だと言っていますよね。子供に対してなら、世界は単純なものかも知れませんが、大人になるつれ、対人関係や、自分に課せられた義務なんかに悩むことも多くなるし、世界は単純ではなくなります。また、差別、戦争、不平等などもあります。それに宗教が入ってきたら、人間の取るべき行動はますます複雑になると思うんですが。」
と、若者は言う。それに対して、哲学者は、
「世界を複雑にしているのは、きみ自身です。」
と断言する。
「世界は客観的なものでなく、主観的なものなんです。同じ世界でも、見る人によって見え方が違うでしょう。」
哲学者は「井戸水」を例に挙げる。冬に飲んだら温かく感じ、夏に飲んだら冷たく感じる。水の温度はいつも同じなのに。
「複雑に見える世界も、きみ自身が変われば、単純なものになりますよ。サングラスをしていれば、世界が暗く見えるでしょう。そんなときはサングラスを外せばいい。その勇気があるかどうか、それが問題なんです。」
と、哲学者は言う。そして、
「誰もが変わることができて、幸せになれます。」
と、また断言する。
「いや、生まれ変わらなければ、人間は変われない。」
と主張する若者に対して、哲学者はコーヒーを勧め、話を続ける。