息子のオフィス

 

シンガポールを訪れた観光客の90%ここで写真を撮る。

 

Hさんのコンドは、三十五階建ての二十八階。窓からの眺望は素晴らしく、遠くにマリーナ・ベイが見えた。

 翌朝、目を覚ますと雷鳴が聞こえる。朝食前にプールで泳ごうと思うが、雷が鳴っている間、プールは使用禁止だという。明日の夕方シンガポールを発つことになっている。今日は実質的に最後の日。

「今日はどうする?」

「せっかくやから、マーライオンに会いに行こう。」

昨日、Hさんの家の前から見たからという理由でもないが、僕たちはマリーナ・ベイに行くことにした。

 九時半にホテルを出て、地下鉄でマリーナ・ベイに。確か息子の会社のオフィスがこの近くだったと思う。下駄のようなマリーナ・ベイ・サンズの中を通り、ミカンを剥いたような「アート・サイエンス・ミュージアム」の前を通り、マーライオンのところまで来る。町の中は月曜日ということもあって空いているが、ここだけは別。観光客で賑わっている。このマーライオンの吐き出している水を、受けているように、飲んでいるように写真を撮るのが流行らしい。早速真似をする。

 十二時ごろに息子から電話があった。

「パパとママ、今どこ?」

マーライオンの前だと言うと、オフィスが近くだから、一緒に昼飯を食べようということになった。十五分後、息子が現れる。彼は、色々な建物の中を通り、数多くのエスカレーターを上り、下り、先ず、ホーカーセンターに着いた。そこで「雲吞麺」を買い、また建物の間の迷路のような道を通り抜け、彼のオフィスのある建物に辿り着いた。

 来訪者登録をして、バッジをもらい、初めて息子の会社に入る。共用スペースに行くと、ラフな格好をした若い人たちが、昼休みということで、談笑したり、食事をしたりしていた。コンビニのような冷蔵庫が並んでいて、中にある飲み物は自由に取って飲んでいいとのこと。

「僕がサラリーマンをやっていた頃とは、違うねえ。」

と感心してしまった。通りすがりのオフィスの中を覗いてみても、書類なんかどこにもない。皆、コンピューターの中に納められているのだ。

「僕らのころは、紙に埋もれて仕事をしていたもんや。」

つくづく、時代の流れを感じる。息子の働いている場所を見たのはよかった。これから、話していてもイメージが湧く。息子が言う。

「今晩、Hさんたちも食事に来るから。」

と言うことは、七人分の食事を作ることに。もう慣れたし、何とも思わない。

 

最近流行の写真の構図。

 

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