お絵描きタイム

「おじいちゃん、次はね〜、パンダ描いて!」
海鮮料理の「メインイベンター」は蟹である。その日も、六品くらいがテーブルを賑わしたが、一番偉そうな顔をしていた料理が蟹。シンガポールで食べる蟹は、たいてい、ニンニクの効いた、甘酸っぱいたれを使った「あんかけ」のようになっている。小さな揚げパンが一緒に供され、その揚げパンをちぎって、蟹の味のタップリ出たたれに浸して食べるのだ。一匹注文すれば、五人くらいで食べられる。一万円くらいかな。
「う〜美味い。気分はもうシンガポール・・・今、シンガポールやがな。」
一人で「のりつっこみ」をやっている。ロバートソン・キーはシンガポールでも一二を争う賑やかな場所。工事現場のクレーンにも、色とりどりの照明が点いている。
話は変わる。舞台の上で、お客さんからお題をもらい、切り絵をしたり、物真似をしたりする芸人さんが時々いる。あれは結構難しいと思う。その場でアイデアを考え、それを形にしなければいけないからだ。難しいがゆえに燃えるというか、チャレンジングな芸だと思う。
今回、エンゾーとその遊びをよくやった。
「おじいちゃん、飛行機描いて!」
「よっしゃ!・・・・ほら、飛行機できた。」
「じゃあ、次、コンコルド描いて!」
「おらよっ。・・・でけた!」
エンゾーから「お題」をもらって、その場で、一分くらいで描き上げて、彼に渡すのだ。エンゾーもだんだん興奮してきて、
「また、フェイジー描いて。」
「フェイジー」とは「飛机」、中国語で「飛行機」。それくらいなら分かる。興奮すると、言葉が混ざってきている。
息子がエンゾーくらいの年齢のとき、やはり、同じような「お絵描き遊び」をやった。彼のリクエストはいつも「サンダーバード」だった。僕は、「サンダーバード一号」から「五号」まで、さっと描けるように研究していた。今、「落書きシリーズ」という連作の絵を描いているが、元々は、自分の子供たちに描いていたスタイルの絵を、発展させたものである。
どの子供たちも絵が好きなことはよく知っている。二年前くらいから始めたのは、学校で教える子供たちの宿題にイラストを描くこと。当時、クラスにRくんという、猫の大好きな子がいた。「短い文を作りなさい」という問題の解答に、必ず猫を登場させた。「たり、たり」を使って書く短文だと、
「ネコは、魚を食べたり、ネズミをおいかけたりするのがすきです。」
とか。いつもユニークで面白い文を書いてくるので、僕は、それにイラストをつけて返した。喜んだRくんは、それを友だちに見せた。それ以来、僕は小学生のクラスでは、全員の宿題に、必ずイラストを描くことになってしまったのだった。でも、とっても好評!

一分で描いた、エンゾーの乗る飛行機。出来はともかく、速いのが取り柄。