アブラハムの家族の家

 

「アブラハムの家族の家」、同施設のウェッブサイトより。

 

今回、アブダビで一番行きたかった場所、それが「アブラハムの家族の家」(Abrahamic Family House)である。先ほども書いたが、Jさんはここで働いておられる。ここには一つの敷地の中に、キリスト教の教会と、イスラム教のモスクと、ユダヤ教のシナゴーグが仲良く建っている。Jさんは、シナゴーグの責任者。彼の職業は、ユダヤ教の「ラビ」。「宗教的指導者」、「律法学者」と日本語に訳されている。元々米国人の彼は、英国で永年ラビとして働いておられたが、二〇二三年に、この「アブラハムの家族の家」が出来たとき、そのラビとして、英国から派遣されたのだった。

何故「アブラハムの家族の家」と言うのか、それを説明するには、三つの宗教の成り立ち、教義に立ち返る必要がある。ユダヤ教徒は、「旧約聖書」のみを信じている。キリスト教の人は、「旧約聖書」と共に「新約聖書」も信じている。更に、イスラム教徒の人は、「旧約・新約聖書」の他に「コーラン」を信じている。つまり、水と油のように思われるキリスト教とイスラム教なのだが、根底のところでは、同じ神を信じているのだ。その神は、旧約聖書で「アブラハムの神」と呼ばれている。

「みんな、アブラハムの神を信じてるんだから、お互い理解し合って生きていこうよ。みんな、アブラハムの子孫、家族なんだから、仲良くやろうよ。」

というのが、この「アブラハムの家族の家」の理念である。

 午後二時頃、Jさんは、お客さんの相手をしなくてはいけないからと、オフィスに戻って行かれた。僕と妻は、他の数人と一緒に、「家」を巡るツアーに参加することになった。ガイドは、黒いヒジャブを被った若い女性である。僕たちは、教会、モスク、シナゴーグを順に回った。三つの建物は、全く同じ素材で、全く同じ大きさに作られている。どれも、立方体である。しかし、柱の形、窓の形などが、それぞれ微妙に違う。三つの宗教の建物を、全て同等に扱ったということが、この「家」の理念をよく表していると思う。

 ちなみに、米国のトランプ大統領が今年の五月に中東を訪れた際、この場所を見学したという。Jさんが大統領を案内し、ふたりが一緒に写っている写真を、僕は新聞記事の中に見つけた。今回、僕たちは、トップのJさん直々に、案内してもらっているわけ。

「これって、大統領待遇?」

 一時間ほどでツアーが終わり、まだ時間があるので、僕たちは「ルーブル美術館」に行くことにした。

「えっ、アブダビに『ルーブル美術館』があるの?」

それがあるのだ。「ルーブル・アブダビ」、「家」から、シャトルバスで五分くらい。スターウォーズの基地みたいな建物が美術館。アブダビは、アラブ首長国連邦の中でも、特に文化的な魅力で観光客を呼ぼうとしているとのこと。「ルーブル」に引き続いて、その隣に、ニューヨークにある「グッゲンハイム美術館」の分館も建設中だという。

 

「ルーブル・アブダビ」、何となく、「スターウォーズ」の宇宙基地のよう。

 

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