シンガポールの絵

 

シンガポールから帰って最初に描いた絵。南国の風に吹かれるようで、結構気に入っている。

 

僕は今、英国ハートフォードシャーの自宅で、シンガポールの絵を描いている。海と、シンガポールのシンボルとも言える「マリナ・ベイ・サンズ」をバックに、青いワンピースの女性が歩いていて、ピンクの熱帯の花がそれに彩を添えている、そんな構図。暑い空気、そこで飲んだ美味しいビール。本来なら、楽しい時間を思い起こすために絵を描くのだが。今回はちょっと違う。

 昨年の十二月、僕はシンガポールを訪れた。一番の目的は、昨年八月に生まれた、初孫に会うため。しかし、残念ながら、シンガポールで僕は体調を崩し、予定を早めて英国に戻ることに。帰国してからも、しばらく体調不良に苦しんだ。およそ一か月経って、やっと元気が戻り、遅ればせながら、シンガポールの絵と旅行記に手を付けた次第。

最初に、この旅行記の「主な登場人物」を紹介しておこう。

l  モト、僕:語学教師。英国在住。八月に出来た初孫に会いにシンガポールへ行くが、急遽英国に戻る破目に。

l  マユミ(妻):遅れてシンガポールにやって来た。オプティミスト。

l  ワティ(長男):シンガポールで活躍する国際弁護士。昨年八月に父親になった。

l  ゾイ(長男の嫁):中国人の銀行家、現在産休中。

l  エンゾー(孫):元気に育つ男の子。

l  ミン(長女):ノンビリお姉さん。スイミングフリーク。

l  モニ(次女):超オーガナイズお姉さん。英国政府に勤める官僚の卵。

l  ハンさん:ゾイの父親。イタリアオペラが好きな意外な一面がある。

l  エレンさん:ゾイの母親、料理の達人。

 息子の嫁、ゾイに、僕は一年ほど、日本語のレッスンをしていた。昨年八月のある日、彼女が、週に一度のオンラインレッスンを直前にキャンセルした。その後、彼女は直ぐに病院に行き、夫に見守られながら、男の子を出産したのだった。翌日、息子から赤ん坊の写真が送られてきた。二千二百グラムと、ちょっと小さめだったが元気そう。エンゾーと名付けられた。彼は順調に成長。毎週送られてくる写真を見ていても、日を追って大きくなっているのが分かった。時にはビデオも送られてくる。生後、三か月を過ぎると、笑ったり、色々表情が出てきて、益々可愛くなる。

「可愛いね。会ってみたいね。」

と妻や娘たちと言っていた。コロナ禍は二〇二一年になっても治まらず、国をまたがっての移動はずっと難しそう。もう年内に孫に会うことは諦めていた。そんな中、十月に入り、息子から連絡があった。

「二度ワクチン接種をした人間は、検疫期間なしでシンガポールに入国できるビザがもらえることになった。」

 

シンガポール航空、エアバスA380、総二階建ての飛行機に搭乗。この飛行機も生産中止になったが。

 

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