究極のワンタンミー

 

究極のワンタンミーの店の前で。

 

タイの金、バーツを持っていても、次回何時使うか分からない。おそらく、もう二度と使うチャンスはないと思う。乾燥した海産物、Tシャツ、絵葉書等を、残りの金を計算ながら買う。

九時五十分に飛行機はプーケット空港を離陸。エア・アジアの飛行機の中は、荷物入れの蓋から、座席の後ろまで、広告が貼ってある。「中吊り」はないものの、何か、日本で都会の通勤電車に乗っている気分になる。ウトウトしている間にチャンギー空港に着陸。外に出ると、プーケットより格段に暑く感じられる。息子の職場に寄って鍵を受取ってコンドに戻る。洗濯機をスタートした後、近くのショッピングモールへ昼食に行く。

ショッピングモールの屋上は、展望台のようになっていた。海峡を挟んで、向こう岸にセントサ島が見える。海峡には、大きな客船が停泊している。

僕はそこのフードモールで、ワンタンミーを食べた。ドライじゃなくて、スープに入ったやつ。これが驚くほど美味しかった。今回、シンガポールとタイで食べた麺類の、ナンバーワンを挙げろと言われたら、僕はそのとき食べたワンタンミーを挙げるだろう。単純明快。奇をてらわないシンプルな味。ワンタンミーの「原点」とも言える味だった。妻はチキンサテを食べている。

隣のテーブルのヨーロッパ人の若いカップルのうち、女性が食べているはどう見てもカツカレーだ。後で店を順に見て廻ったら、日本食の店もあった。そこで買ったわけね。日本のカツカレーって西洋人にも人気があるようで、「めぞん一刻」で出会ったスイス人も、日本食の中でカツカレーが一番好きだと言っていた。

夕方までプールサイドでノンビリする。七時ごろに息子が帰って来た。

「ああお腹減った。」

バスに乗って、またまたホーカーセンターに食事に出かける。アレクサンドラ・ロードのホーカーセンターは、公営住宅の集まっている地域にあった。場所も、公営アパートの地階にある。公営住宅の住人は、基本的に余り金持ちの人はいない。初日に行った、チョムチョム・ホーカーセンターを、もうワンランク庶民的にした感じの場所。早い話が、観光客は僕たちを除いては誰もいなくて、全てが地元の人たちだけ。年金生活のお年寄りが、小遣い稼ぎにティッシュを売りに来る。

そこで子豚のレバー炒め、ベニソン、つまり鹿肉の炒め物、鶏手羽、具沢山の焼きそば。焼きそばは野菜と麺が半分半分、麺が実にムッチリしている。麺が野菜のエキスをたっぷり吸って、それだけで良い味になっているのは、ホッケンミーやタイ風焼きそばと同じだった。

九時半頃にコンドに戻ると、リビングルームに小学生くらいの男の子がふたりいた。息子のフラットメイトのジャクリーンのお姉さんもシンガポールに住んでいて、その家族が遊びに来ていたの。僕は皆さんに挨拶をして、そのままベッド入って寝てしまった。息子は明日、日曜日の朝、友達と二十キロ走るという。

 

客層が、一段と庶民的な、アレクサンドラ・ロードのホーカーセンター。

 

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