雨季雨季タイランド

 

森の中の別荘のような雰囲気のコテッジの玄関。

 

プーケット空港で荷物を取り、玄関を出る。ホテルまではタクシーを予約していた。ホテルの名前の書いた札を持った、いかにもタイ人のお兄さんが待っていた。ホテルの歓迎係とのこと。車を待つ間、

「ここはロシア人が多いんですか。」

とお兄さんに聞いてみる。

「今年はこれでも、少ないほう。去年はもっと多かったですよ。それと中国人。これが双璧ですね。」

と言う。やっぱり、中国人の観光客が多いのは京都だけじゃないんだ。

ホテル差し回しのタクシーで、「ザ・スーリン」へ向かう。乗ると直ぐに、タクシーに乗ると運転手が、お絞りとミネラルウォーターのボトルを出してくれる。さすが高級ホテル、最初からきめ細かいサービス。窓の外は相変わらずの激しい雨。

「昨日も雨だったんですか。」

と運転手に聞くと。そうだったという。

「明日の天気予報って聞いてますか。」

と聞くと、明日のことは分からないとのこと。しかし、この一週間、ほとんど毎日雨だったんだって。タイは今雨季。僕たちは毎日の雨の振る季節に来てしまったのだ。でも、そのことは、そのとき初めて知った。

「電線が多いね。」

と窓の外を見て妻が言う。確かに。道路に沿って電柱が並んでおり、無数の黒い電線が、とぐろを巻くようにそれに絡み付いている。基本的にヨーロッパは電気や電話のケーブルは地中に埋められており、電線が外に張られているのを見るのは珍しい。外を見るとタイ語の標識ばっかり。言葉好きの僕だが、今回はタイ語に対する予備知識はゼロ。道路標識の殆どは理解不能。道を無数のスクーターが走っている。二人乗りはざら、ひどいのは三人乗り。誰もヘルメットなんかかぶっていない。交通ルールに関しては「何でも通し」。これでやっとアジアの国に来た気がする。

「わあ、豪華!」

妻と僕は自分たちの泊まる部屋を見て驚愕し、感激した。厳密に言うと、ホテル「ザ・スーリン」は、管理棟が真ん中にあり、その周囲に、海岸に沿ったコテッジが並んでいる。僕たちが泊まることになったのは独立したコテッジだった。ホテルの建物もそうだが、コテッジのインテリアも、落ち着いて、しっとりとした感じで、それでいて豪華さを感じさせるデザインになっている。従業員の接客態度もとても丁寧。挨拶をしたり、御礼を言うときに手を合わすというのも、タイらしくて好感が持てる。シーズンオフでホテルはガラガラ。二十パーセントくらいしか客室は埋まっていないよう。そのお陰で、この豪華ホテルに、僕たちが払える範囲の値段で泊まることができるのだが。

 

雨が多いので、空も海も真っ青とはいかないが、南国の匂いがする。

 

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