バブーンのお出迎え

 

バブーンのお出迎えを受けて、国立公園内に入る。

 

国立公園内で「車から降りられない」というのはちょっと辛いこともある。何時間も車に乗っているのだから当然トイレに行きたくなる。本来なら、

「ちょっと停めて。」

と言って降りて、藪の中で用を足せばいいのだが、藪の中にライオンが隠れているかも知れない場所では、そうもいかない。安全な場所というと、電流の通った柵で囲まれたキャンプ場か、よほど見晴らしのよい場所ということになる。おしっこの近い方は、携帯トイレか、紙おむつが必需品かも。

国立公園のゲートを入ると直ぐに、僕たちはバブーンの歓迎を受けた。日本人のガイドをこれまで何度も引き受けて、少し日本語が話せるエマヌエルさんは、

「『ヒヒ』です。」

と言った。このバブーンは、シマウマと共に、国立公園で最もよく出会った動物である。どの動物もそうだが、赤ちゃんは可愛い。お母さんの背中にしがみ付いている小猿は愛らしかった。

「今日は、バブーンが来ていますから、食べ物を外に出してはだめですよ。襲われますから。」

とロッジのフロント係が言った。庭を見ると、何匹かのバブーンの姿が見える。翌朝、朝食に行くために部屋のドアを開けた。そしたら、三匹のバブーンが部屋の前にチョコンと座っていた。

「おはよう。」

微笑ましい朝のお出迎えである。

話は前日に戻る。公園のゲートを入り、十分ほど走るとビジターセンターがあった。そこで入場料を払う。三人と一台の車、それとボートトリップを入れて百六十六ドル、二万円弱だった。これを高いと言うか、安いというかは価値観の違いがあると思う。広大な国立公園を維持管理するコストを考えれば、妥当な線ではないかと僕は思う。

国立公園のロッジにチェックインして、プールサイドで昼食を取る。眼下には湖が広がっている。プールの管理人が、湖はイヘマ湖という名前で、アカゲラ川が流れ出しており、その川はビクトリア湖に注いでいると言った。数キロメートルほど離れた向こう岸は、もうルワンダではなくタンザニアである。翌日エマヌエルさんに聞いたのだが、この湖を通じて国立公園がタンザニアと繋がっているということが問題で、密猟者が簡単に小さな船でやって来られて、動物たちを不法に殺し、売ることを容易にしているとのことだった。しかし、ルワンダに来てずっと感じていることなのだが、その日も寒くもなく暑くもない快適な気候、湖とサバンナに覆われた丘は美しく、吹き渡る風は涼しい。

昼食の後、ボートツアーの始まる三時まで、エマヌエルさんが少し辺りを回ってくれた。先にも書いたが、典型的なサバンナ、草原に低い木が生えている。なだらかな丘の連続。そこに、赤土をむき出した、車が一台通れるだけの道が付いている。草原の向こうにはイヘマ湖が見える。辺りに咲いている黄色い花が可愛い。その日見た動物は、シマウマ、インパラ(足の細いシカのような動物)、トピー(シカと牛の間のようなもの)、イノシシ、バッファロー、そんなものだった。

 

一番頻繁に出会ったシマウマ。縞の模様は、人間の指紋のように個体により全て異なるという。

 

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