カバと水牛のスキンケア

 

湖の島で、コロニーを作っている鵜。何百羽もの鳥が木の上に巣を作っている。

 

三時にボート乗り場に行く。細身の(ルワンダ人は皆細いのであるが)テオジャンという名前の青年が、十人ほど乗れるモーターボートの船長兼ガイドとなる。乗客は、ベルギー人の夫婦と、僕たち夫婦の四人だけ。イヘマ湖をボートで廻り、そこに住む動物を観察するというツアーである。ボートが出発してすぐに、カバが見えた。双眼鏡で眺める。見えるのは、水面から出ている、耳、鼻、目だけである。

「カバ、何してる?」

と妻が尋ねる。

「逆立ちしてる。」

「バカ!」

「カバの皮膚は太陽光線に対して感受性が強いんで、昼間はずっと水の中に浸かっているんです。夜になったら、岸に上がって草を食べます。」

とテオジャンが言った。双眼鏡で見ていると、一匹のカバがあくびをする。薄いピンクの大きな口の中が見える。「カバのような口」とはよく言ったものだ。

「ここにはワニはいなんですか。」

とベルギー人の客が尋ねる。

「いっぱいいます。今は雨季なので、湖の水量が多いんです。だからワニは岸辺の藪の中にいるので見にくいですね。」

とテオジャンが答える。一度だけワニが見えた。

「あ、あそこにワニ!」

とベルギー人の男性が指差す。その方向を見ると、小さな黒い突起が水面に浮かんでいた。しかし、それは数秒後に姿を消した。

「ワニは数時間、水中に潜っていられます。」

とガイド氏。再び顔を出す可能性はなさそうである。

ひとつの島が鳥のサンクチュアリになっていた。特に多かったのは、日本で言う「鵜」である。何百羽という鳥がコロニーを作っている。高い木の上には、白い頭で黒いからだの「アフリカン・フィッシュ・イーグル」という鷹が泊まっていた。水辺の木に、直径十センチくらいの球形の巣が何百個とぶら下がっており、そこに黄色い鳥が出入りをしている。雄が巣を作り、そこに交尾のために雌を招待するという。せっかく苦労して巣を作ったのに、雌に来てもらえない雄も多いとのこと。

「人間と一緒だね。」

とベルギー人の男性が言った。

ボートツアーを終わっての帰り道、バッファロー、水牛の群れを見た。泥場になっているらしく、そこで転げまわって体中に泥を塗りこんでいた。

「あれは、泥で身体を保護しているのです。」

とエマヌエルさんの説明。

「あなたがサンローションを腕や肩に塗りたくっているのと同じだね。」

僕が妻に言う。だんだんと夕闇が迫ってきた。草原に立つトピーのシルエットが印象的だった。

 

泥場でスキンケアを終えてスッキリしたバッファローの皆さん。風呂上がりの気分?

 

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