ギリシアのお地蔵さん

 

日本のお地蔵さんのように道路脇に立つギリシアのミニチュアの教会。

 

ホテルの前にミニチュアの教会があったので、義母とマユミとで記念撮影をする。ギリシアには、このような日本で言うと「祠(ほこら)」に当たるような、小さな教会が、道端に沢山立っている。

「お地蔵さんみたいなものね。」

と義母が言った。

ホテルに戻り、プールで人泳ぎした後、午前中ながら、プールバーでビールを飲む。その後、初めてホテルで昼食を食べる。これまで朝食と、夕食しか食べなかった。結構カロリーの高いものを沢山食べるので、とても昼食は入らない。昼食のメニューは夕食に負けず劣らず、豪華なものだった。

「ええっ、本当にこれを三食とも食っている人がいるの。」

僕等は顔を見合わせる。

飛行機は午後八時、まだまだ時間があるのでロードスタウンに行ってみる。ロードスシティーの城壁は二重になっているが、その二つの城壁の間を歩く。当時の大砲は、砲弾ではなく石を飛ばしていた。当たっても、そのショックで壁が壊れるだけで、別に爆発はしなかったのだ。守備側は、ショックの緩衝材として、草などを吊るしていたという。当時の砲弾、つまり丸い石があちこちに転がっている。その城壁の間で、何故かラグビーをしている若者がいた。

旧市街の狭い道に入る。風が通らないので、蒸し暑く、義母は汗をかいている。トルコ風呂なんてのがあって、営業していた。機会があれば、話の種に入ってみたいものだ。街を一回りした後、港の前のトルコマーケットのカフェに座り、一服する。

六時半にホテルを出て空港へ向かう。駐車場に車を停めてキーをカウンターへ返しにいくと、レンタカー屋のお姉ちゃんは車をチェックしようとさえしなかった。鷹揚というか何というか、いかにもギリシアらしい。

手荷物検査で、リュックサックの中の「大リーグボール養成ギブス」と金魚へのお土産の石が引っかかる。中身を出して、用途を係官に説明する。もちろんオーケーになったが。

ワインを飲みながら出発を待つ。休暇の帰りの飛行機を待つときは、いつもちょっと残念な気分だが、ロンドンでもまた楽しいことがあると、自分に言い聞かせた。

午後九時、飛行機は定時に飛び立った。飛行機の中ではできるだけ眠るように努める。十一時にガトウィックに着く。車を取って、百五十キロを運転して家に戻ったのは午前一時半。ギリシアではもう三時半である。さすがに疲れた。

二時半に眠ったが、翌朝七時にはもう目が覚めた。ロードスではもう九時だ。僕はロードス島の海岸で拾ってきた石を水道水で洗い、金魚の水槽に入れた。水の中で石はなかなかカラフルで見栄えがする。金魚達は、別にそれに関心を払うこともなく、いつものようにプカプカ泳いでいた。

かつての砲弾が城壁の間に転がっている。

 

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