金のあるときゃ暇がない

 

ライン河の渡し船に乗って対岸に渡る。

 

「金のあるときゃ暇がない、暇のあるときゃ金がない。」

世の中は意のままにならないもの。今回、ドイツの友人たちを訪問しようかと思ったきっかけは、九月の末に今の会社を辞めることになったこと。会社を辞めたら、時間はできるだろうが、収入は減る。そうそう海外には出て行けない。デートレフとはここ数年で何回か会っているが、どれもデュッセルドルフ出張の際、仕事が終わってから会いに行ったもの。自分の金を使ってはいない。今回、貧乏になることを見越して、まだ会社で働いていて、少しは金のあるうちに、行ってしまえと考えたのだ。ちょうど、妻も、同じ町に住んでいる上の娘も、日本に帰っていて、その週末は「独身」でもあるし。

ホテルで朝食を済ませ、玄関で待っていると、マンフレッドが車で迎えに来てくれた。一度彼の家に寄る。リビングルームで二十歳くらいの若い娘さんが、リュックサックに荷物を詰めている。昨日ウィーンから戻ってこられた、下の娘のフレデリカだった。

「初めまして。マンフレッドの同僚で、英国から来た日本人のモトです。」

と自己紹介をする。

「あなたの話しは、父から嫌になるほど聞かされているわ。」

う〜ん、良い話だといいんだけど。

「フレデリカ、だけど、フレディって呼んでね。」

と彼女は言った。

「確かに、あなた、外国人っぽくないドイツ語を話すわね。」

一応褒め言葉として受けとめておこう。リュックサックを詰めているのは、これから山歩きに行くからだという。結局、今日、エルツ城に行くのは、マンフレッドとクリスティーネと僕の三人になり、僕たちは十時半に、マンフレッドの運転で出発した。

エルツ城はライン河の西岸にあるので、河を渡らねばならない。しかし、ボンからコブレンツまで、五十キロ以上橋はない。それで、ウンケルという街まで行って、そこからフェリーに乗る。「フェリー」と言うと、何となく大きな船を想像するが、「渡し舟」と言った方がよい。車が十台乗れるか乗れないくらいの船で対岸に渡る。五分も掛からない。しかし、たとえ超短距離でも船に乗ると何となく気分がウキウキする。

ラインの西岸に入り、アイフェルという山地に入る。ここは国立公園になっている。ドイツ観光局の日本語サイトによると・・・

「アイフェル国立公園は、ノルトライン・ヴェストファーレン州のアイフェル地方北部に位置しています。この国立公園は、ドイツ西部の国立公園空白地帯を埋める存在であると同時に、中級山地の酸性土壌に広がる、西岸海洋性気候区のブナ林を初めて保護したものです。かつて木々が伐採されていた場所には、現在は天然の森林が広がっています。そして、二千百七十種以上の絶滅危惧動植物にとって、生き延びるために必要不可欠な 『撤退地』 になっているのです。」

 

渡し船から。ライン河沿いの丘の上には、必ずと言っていいくらい城の跡が見える。