思考パターン

 

博物館自体が、芸術品と呼べないこともない。

 

 午後四時ごろ、僕は国立博物館を出て、空港に向かった。飛行機の出発は夕方の七時半、十分に時間がある。地下鉄の中で、僕は今回の旅行を振り返った。

「なんか、結構大きな充実感があるなあ。」

美しい町並みを見られたこと、念願のモルダウの橋の上に立てたこともあるが、色々な人と話せたことが、その充実感の一番大きな原因のように感じられた。

「それにしても、色々な人たちと喋ったなあ。」

「エホバの証人」のカップル、ツアーガイドのカミルさん、一緒にツアーに参加した人たち、そして今日会った朱さん。今回の旅行には会話があった。誰かと一緒なら、その人とばかり話してしまうので、一人旅ならではの醍醐味であろう。 

 朱さんとは、一時間くらいカフェで話していたが、中国語で話しているのに、日本人と話しているような気がした。これまで、中国語の先生も含め、中国本土の方たちばかりと話してきた。

「台湾の人は話し方がソフトやなあ、」

と僕は思った。(朱さんが特にそうなのかも知れないが。)中国本土の方って、結構押しが強いというか、自己主張が強いというか、言葉で戦っているような気分になる。その点、今日、朱さんとの会話は純粋に楽しめた。その原因は、彼女の思考パターンと、僕の思考パターンが、よく似ていたからだと思う。ほぼ同じ年齢、ほぼ同じ境遇。

 週に三回、「ベルリン・コネクション」と言う、オンライン・ドイツ語会話クラブに参加している。ドイツ語を勉強している、世界各国の老若男女が、毎回一時間、一つのテーマについて、二、三人のグループに分かれて、ドイツ語でディスカッションをするのだ。色々な文化やバックグラウンドを持った人が、違った角度から意見を言うのでとっても興味深い。タカコさんとマイさんという二人の日本人も参加しておられる。時々彼女たちと一緒のグループになる。もちろん、日本人同士であってもドイツ語で話す。しかし、タカコさんとマイさんのドイツ語は、僕にとって圧倒的に理解しやすい。それは言葉のレベルの問題ではない。日本人として思考パターンが似ているからだ。つまり、ドイツ語で話していても、日本人として、日本式に考えているから。だから、分かりやすい。同じ思考パターンの人と話すと、安心できるものなのだ。

 そんなことを考えているうちに、地下鉄は終点に着いた。そこで空港行のバスに乗り換える。空港に入る。幸い、僕の飛行機は定時に出発することになっている。まだ出発まで、二時間くらいある。最後にチェコのビールを飲みたいが、スタンステッド空港から家まで車の運転がある。

「まっ、まだ車の運転まで四時間あるから、一杯だけならいいか。」

僕はビールを注文した。

 

さらばプラハ。帰りの飛行機に乗り込む。

 

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