ウォーキング・ツアー、その一

 

ガイドのカミルさんについて、ゾロゾロ歩いて行く。

 

 二日目は、「プラハ市内巡りウォーキング・ツアー」に参加することにしていた。集合は十時に「粉の門」の前。赤い傘を持った人がいるとのことだった。場所は昨日確認してあった。朝食を済ませ、九時十五分に外に出る。今日も結構寒い。携帯で確かめると、最高気温の予想が十四度と出ている。今日も、長袖のTシャツにパッチを着こんでいる。幸い、今日は雨の予想は出ていない。

十五分前に集合場所に行くと、赤い傘を持った二人の男性がいた。その周囲に、ツアー参加者と思われる人たちが立っている。全部で三十人くらい集まっていたが、それが十五人ずつくらいの二つのグループに分けられた。カミルさんという、三十代の男性が、僕たちのグループの担当になった。言葉はもちろん英語。参加者の中に、カナダ人のご夫婦がいたが、それ以外は、フランス人、オランダ人、ドイツ人、そして僕というように、「非英語圏」の人たちが大多数。その人たち、皆、とっても英語が上手い。ガイドのカミルさんとのやりとりも、実に流暢。最近のヨーロッパは変わった、と思う反面、英語が達者だから、この英語ツアーに参加しているんだよな。当然と言えば当然。

カミルさんは、僕たちを引き連れ、細い旧市街の石畳の道を進んでいく。ときどき立ち止まり、ユーモラスなエピソードを交えながらの説明が入る。建物に対する説明もさることながら、チェコの文化、歴史などの背景に触れられていて、チェコに対する理解が深まっていく。

僕たちは、とあるビアホールの前で立ち止まった。

「皆さん、世界で一番、一人当たりのビール消費量の多い国はどこか分かりますか。」

とカミルさん。

「ドイツ!」

「いいえ、ドイツは二位で、一位はチェコです。チェコは二位のドイツにダブルスコアの差をつけています。」

ひえ〜、あのドイツ人の倍もビールを飲む人たち。信じられない。

 カミルさんの説明の中に「ボヘミア」という言葉が頻繁に登場する。昨日、「ボヘミアングラス」の店を訪れたが、昔はこの辺り、「ボヘミア」と呼ばれていたのだ。

「♪ボヘミア〜ン♪」

葛城ユキ。(もう誰も知らないよね。)どうして葛城さんはチェコの歌を唄っていたのか。ヨーロッパには、かつては「ジプシー」と呼ばれ、今では「ロマ」と呼ばれる、定住しない、「流浪の民」がいる。西欧の人たちは、その人たちが「ボヘミア」から来たと思っていたらしい。それで「社会の型にはまらない自由な生き方をする人」を指して「ボヘミアン」と言うようになったらしい。フランス語では「ラ・ボエーム」、プッチーニのオペラの題になっている。なかなか面白いオペラだった。

 

狭い路地を抜けて行くと、方向感覚を失ってしまう。

 

<次へ> <戻る>