屋根のない美術館

 

ブリュッセルの「グランプラス」にちょっと似た感じの広場。

 

 世界には、「屋根のない美術館」と称される町が幾つかある。有名なところでは、ベルギーのブルージュ。町全体に、歴史的な建物が保存されており、町そのものが歴史博物館の様相を呈している。ヴェネチア(ベニス)やフィレンツェも、そう呼ぶことが出来るだろう。しかし、僕はプラハの旧市街を歩いてみて、

「ここぞ『屋根のない博物館』や。」

と思った。僕は絵を描く人である。プラハの旧市街の、どの部分を切り取っても、絵の題材になる。それほど、旧市街の建物はよく保存され、美しかった。

 問題は天気だった。突然雨が降り出す、かと思ったら、また晴れる。目まぐるしく変わる天気。英国のスタンステッド空港を出る時、気温は三度くらいだったか、プラハも決して暖かくはない。それに風が強いので、体感温度は更に下がる。ホテルを出る時、パジャマとして持ってきた、長袖のTシャツとレギンスをセーターとジーンズの下に着込む。それでもまだ寒いくらい。

「パッチ持ってきて正解やったなあ。」

 旧市街を、両側の建物を見ながら歩いていると、広い場所に出た。ブリュッセルの「グランプラス」を思わせる、四方を歴史的な建造物で囲まれた広場である。色々な色彩や様式の建物に取り囲まれている楽しい場所。

「わあ、すごい、すごい。」

無邪気に喜ぶ。

「あれ、この景色どこかで見たことあるで。」

プラハの町を歩いていると、「デジャヴュ」体験を何度もする。もちろん、プラハを訪れるのは今日が初めて。よく考えてみると、「デジャヴュ」の元になる体験が、僕がこれまで歩いたことにあるヨーロッパの町、ブリュッセルだったり、フランスのリールだったり、僕が昔住んでいたドイツのマ―ブルクだったりする。

 旧市街の道は複雑怪奇。あらゆる所に細い路地があり、空港で貰った地図と、スマホの「グーグルマップ」を見ながら歩いているんだけど、自分がどっちに向かっているのか、よく分からない。ちょっとした迷路。その時、突然視界が開ける。前に川が流れていた。これが「モルダウ」だ。右手に有名な「カレル橋」が見え、対岸の丘の上には宮殿が見える。「NHK名曲アルバム」で見た景色だった。

「やったあ、モルダウや。」

「タ ラ〜ラ ラ〜ラ ラ〜ララ ラ〜ラ〜ララ〜」

僕は、スメタナのメロディーを口ずさみながら、カレル橋に向かう。カレル橋は石造りの橋で、欄干に、石で作られた像が並んでいる。正に、プラハ観光のハイライトという場所。テンションが上がる。

 

市庁舎にある、天文学時計。天動説の時代に、それなりの理論を駆使して作られた。

 

<次へ> <戻る>