古式ゆかしいホテル

 

走らなんかがメッチャ太い、プラハ地下鉄の駅。

 

 根負けしたのは、審査官の方だった。彼女は投げやりな感じで、

「指紋を取るから、ここに指を乗せろ。写真を撮るから帽子を脱げ。」

とジェスチャーで指示した。僕は、指紋と顔写真を撮られて、無事入国審査を通過。

空港の前のバス乗り場に行くと、空港の正面に「ヴァーツラフ・ハヴェル空港」と書いてあるのが見えた。空港に人の名前が付いていることは珍しくない。ニューヨークの空港は「ジョン・F・ケネディー空港」(JFK)だし、パリの空港は「シャルル・ドゴール空港」(CDG)である。ケネディーさんも、ドゴールさんも超有名人であり、超重要な人なので、このヴァーツラフ・ハヴェルさんもそのような人だと想像した。後で調べてみると、共産主義政権が倒れるときに、民主化運動を指導した人で、民主主義になったチェコスロバキアの初代大統領だった。

「そう言えば、どこかで聞いたことがある。」

 ホテルへ行く道は、空港案内所の可愛くて優しいお姉さんが、地図の上に書いてくれていた。十五分ほどバスに乗り、地下鉄の終点駅まで行き、そこから地下鉄の「黄色ライン」に乗り、「フロレンス駅」で降りて、歩いて五分。

「旧共産主義の国は駅が立派や!」

駅で僕はそう思った。ハンガリーのブダペストでも、中国の深圳でも思ったのだが、共産主義の国って、駅とか、公共施設を、やたらでかく造る傾向があると思う。資本主義の国って、「最低限実用的なら、それ以上は必要ない」って感じなのだが。

 飛行機を降りて、一時間半ほどして、僕はフロレンス駅に降りた。「ホテル・オペラ」は駅のすぐ前だった。ピンクの建物である。中に入ると、なかなか古式ゆかしい造りになっている。廊下や階段には赤い絨毯が敷かれており、階段の手すりは磨きこまれた木である。今から四十年くらい前、初めてドイツに赴任した時、出張で訪れた先のホテルが、ちょうどこんな感じだった。今では、ドイツのホテルも、大手チェーンの経営になるものが多く、近代的だが画一的である。

「何か、懐かしい気がするなあ。」

僕はエレベーターに乗って、自分の部屋に行った。鍵は一応「カードキー」である。果たして、部屋も、四十年前のドイツの感じだった。先ず、携帯をチャージするためのUSBポートがない。ミニバーがある。ミニバーの上には、紙が置かれており、自分が飲んだ分を書き込む「自己申告制」。懐かしい感じのするこの部屋で、三日間過ごすのも悪くない。

「スマホを充電するために、USBの付いた差し込みを買わなあかん。」

時間はまだ午後一時。まだまだ観光する時間は十二分にある。僕は、ホテルを出て、旧市街に向かって歩き出した。

 

レトロ感が漂う「ホテル・オペラ」の外観。中もとってもレトロ。

 

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