LCC

プラハ行のライアンエアの搭乗口に並ぶ。
火曜日の朝五時、僕は車で家を出て、スタンステッド空港に向かった。家を出る時はまだ薄暗かったが、空港の駐車場に車を停める頃には、完全に夜が明けていた。五月というのに、気温は一度、霜が降りている。
今回、僕の乗るのは、八時半発の「ライアンエア」である。同社は、ヨーロッパでは結構有名なLCC(格安航空会社)の老舗。時間がちょうど良いので、僕はこの会社の便を選んだ。ちなみに、「格安」というだけあって、運賃は往復で七十ポンド、約一万五千円。京都から東京まで新幹線で往復するだけで、二万五千円くらいかかるので、結構お得。しかし、色々追加料金があり、荷物を預ける、機内にスーツケースを持ち込む、座席を選ぶ、機内で飲み物や食べ物を注文する、CAさんのお尻に触る、それぞれに別料金が要る。(最後は冗談)どうせ三日間の旅なので、僕は小さなリュックの中に、靴下二足、パンツとTシャツ各二枚、パジャマ、日記帳だけを入れ、超軽装で旅立った。紙の搭乗券はなく、スマホに「ライアンエア」のアプリを入れ、そこで表示されるQRコードを読ませて、搭乗の手続きをする。そして、この「搭乗券がない」ことが、後で問題を起こすことになるのだ。
六時半に空港の待合ロビーに入る。朝早いのに、すごい人。座る場所を探すのが大変。やっと席を見つけて、昨晩作っておいた「ゆかりお握り」を食べる。搭乗ゲートが表示されたので、そこへ行く。待っていると、飛行機がそのゲートに着いた。LCCの乗客は飛行機とターミナルビルをつなぐブリッジなんて使わせてもらえない。タラップを降りて、ターミナルまで歩かされる。何より驚いたのは、前の便の最後のお客さんが降りた瞬間に、次のお客さんの搭乗を始めたことだ。「機内清掃」なんて一切なし。バスのように、降りたらすぐ乗せる。
「なるほどね、こうして一台の飛行機を効率的に運用しているわけや。」
さっさと新しい客を乗せたボーイング七三七型機は、予定出発時刻より五分早くゲートを離れ、飛び立った。飛行機は上昇して、やっと水平飛行を始めたなと思ったら、またすぐ下降に転じ、一時間半ほどでプラハ空港に着陸。予定より十五分ほど早い。チェコも今、菜の花の季節らしい。黄色いパッチが地面に貼り付いている。
チェコの入国審査では「EU」以外という列に並ばねばならない。英国はEUを離脱したから。女性の審査官が、何かを言ってくる。英語ではない。
「おいおい、入国審査官が英語喋れへんでどないすんねん。」
よ〜く聞くと「ボーディングカード」と言っているよう。先ほども述べたが、「ライアンエア」の搭乗券はスマホのアプリの中に入っている。しかし、アプリは立ち上がらない。当然だ。Wi-Fiもないし、チェコの携帯電波も拾えないから。携帯を見せて、
「ボーディングカードはこの中。Wi-Fiがないので、見せられない。」
その後、審査官と間で「見せろ」、「見せられない」の押し問答が三分ほど続く。

僕の乗る飛行機から降りて来る人たち。この後すぐに乗り込む。