バスで帰ろう

 

寂れた感じだが、だんだんと「渋さ」を感じるようになる、ジョージタウン旧市街。

 

「鉄道オタク」の僕としては、ペナンからKLに戻る際、多少手間と時間がかかっても、鉄道を使いたかった。ペナンの駅は、ジョージタウンからフェリーで渡った本土側にあり、そこからタイのバンコック行きと、シンガポール行きの列車が出ているらしい。「らしい」と言うのは、インターネットで時刻を調べようとしたが、KL行きの列車の情報が全然出ていないのだ。しかし、列車のあることは確か。事実、娘のスミレは、バンコックまで列車で帰っている。

フェリーに乗り、対岸の駅まで行って確かめようかと思ったが、それも邪魔臭い。それで、僕は鉄道をあっさりあきらめ、KLまではバスで(英語で長距離バスは「コーチ」と言うのだが)戻ることにした。

ジェイソンによると、ジョージタウンの中心、コムターのバスターミナルに、KL行きのバスの切符を売っている会社があるとのこと。ローストランチでお腹が一杯の僕は、腹ごなしを兼ねて、そこまで歩いて行くことにした。コムターにはトウモロコシ型の高いビルが建っているので、それを目標にすれば、絶対に迷うことはない。

三十分ほど歩いてコムターまで来る。ジェイソンの言ったとおり、バスターミナルの横に旅行会社があった。

「明後日の午前中、KLまでコーチで行きたいんだけど。」

と言うと、八時ちょうどにコムターを出発するバスがあるという。それを予約する。三十五リンギットだった。

その後カメラを買った。実は、ペナンに着いた日、落としてしまったニコンのカメラ、レンズだけが壊れたのかと思ったら、本体も調子が悪く、レンズを換えても時々シャッターが切れないことがある。僕はカメラ人間なので、カメラなしでは生きていけないのだ。

それで、またまた「大枚」四百リギットを払って今度はコンパクトなカメラを買った。今度もニコン。いつも一眼レフを持ち歩いている僕だが、定期入くらいの大きさと軽さで、ポケットに入るカメラも手軽で悪くない。

そのカメラを持って、またジョージタウンの町を一周する。ジェティーと言う場所に行ってみた。一見普通の街なのだが、よく見ると、海の上に立っているのだ。路地と家の間から水が見える。家の中を覗くと、中国語のテレビをやっている。中国人の人達は、床に座るのが習慣なのか、子供達は床に座ってテレビを見ている。そして、その床の下は海なのだ。

昨日、バスに乗って一時間以上掛かったのに懲りて、今日はジョージタウンからガーニーまで海岸に沿って歩く。

途中、クリスマス・コンサートのあった高級ホテル、「イースタン・アンド・オリエント」の前を通る。「リクショー」と呼ばれる、自転車の前に座席をつけた。いわば人力車とすれ違う。乗っているのは太った白人のおばさん。漕いでいるのはマレー人のやせたおじさん。どうも、見ていて「素直に喜べない」光景だ。

 

おばちゃん、そんなのに乗ってないで、ダイエットのために歩けば?

 

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