市内観光バス

 

ジェティーと呼ばれる中国系の人達の住む水上家屋群・・・

 

三時間近く歩き回って少し疲れたので、帰ろうと思い、フェリー乗り場の「タクシー」と書いた場所に行く。しかし、タクシーは来ない。地図を見ると、チズコ家族の住むガーニー地区までは三キロほど。歩いても一時間はかからない。僕は歩き始めた。

途中バス停があった。でも、時刻表も何もない。待っている人達の中で、一番英語が話せそうなOL風の女性を選び、そこからガーニー行きのバスがあるかどうか聞いてみる。

「一〇三番に乗ればガーニーへ行きます。」

と訛りのない英語で答えが帰ってきた。料金を尋ねると、

「一リンギット四十セントです。」

とのこと。そう言えば、持っていたボールペンが出なくなったので、街のキオスクに入った。店番の年配のおばちゃんに英語が通じるかなとヒヤヒヤしながら、

「ボールペンある?」

と聞く。一応通じて、おばちゃんはボールペンの入ったガラスビンを指差す。その後、

「もっとあんたにピッタリのがあるわよ。」

と彼女は言って僕を別の場所へ連れて行った。そこにあったのは、「ハローキティー」のピンクのボールペン。もちろん彼女の冗談。しかし、雑貨屋のおばちゃんにして、英語で冗談が言えるのだから感嘆する。白人達が好んでペナンに住むのも分かるような気がする。おまけに僕は漢字が読める。「英語が通じて漢字が読める」。世の中に、こんな便利な場所はないような気がする。

十五分ほど待つと、一〇三番のバスが来た。乗り込む。バスの中はちょっと寒いくらい冷房が効いている。バスに乗ったのは、正解とも言え、正解でないとも言えた。その日はクリスマスイブ。道が滅茶苦茶混んでおり、ガーニーに着くまでに一時間かかった。はっきり言って、歩いた方が断然早かったのだ。おまけにバスは海岸通を真っ直ぐガーニーに向かわないで、あちこち寄り道をする。しかし、寄り道をすることで、街の様子が良く分かったことも確か。市内観光バスに乗ったと思えば良いのだ。

ジョージタウンの旧市街はちょっと寂れた場所だという印象があったが、「コムター」と言うとうもろこし型の高層ビルのある界隈は、すごく賑やかで店も多かった。

六時前にチズコのアパートに戻る。エレベーターではご馳走を持ったケータリングサービスの人と一緒だった。今日はクリスマスイブ。パーティーをやる家庭があり、そこへ配達するのだろう。チズコとジェイソンに、

「コーヒーショップでアイスティーを飲んで、街の食堂で『ワンタンミー』を食べて、バスに乗って帰ってきた。」

と言ったら、ふたりから、

「モトは完全に地元の人間になっちゃったね。」

と褒められた。

・・・ごく普通の街のようだが、足元の板の間には水が見える。