カイトサーフィンのお手伝い

 

水から上がるマユミ。まだ水着の下は付いていた。

 

復路も一時間半で車を停めたカラファティスに戻る。駐車場で会った若者が、マユミに、

「チェルシー万歳!」

と言った。マユミは英国のサッカーチーム「チェルシー」のシャツを着ている。そして、チェルシーは僕達が英国を発つ前の日曜日に、リーグでの優勝を決定していた。

 三時ごろにペンションに戻り、またペンションの前の砂浜に行く。紫外線が強いが、気温が低いのと、風があるのでそれを感じさせない。マユミが泳ぎに行くが、彼女は今日はビキニ。波が強いので、気にしている。

「途中でビキニが外れたら、パンツを持って来てね。」

と言って入って行く。しばらくして水から上がってきたが、ビキニの下はまだ付いていた。

 今日も、カイトサーフィンをしている兄ちゃんがいる。彼は凧を巧みに操り、スラロームのように右に左に移動している。ただ、そのお兄ちゃんの近くには危なくて近寄れない。

そのお兄ちゃん、水から上がって来る。凧はまだ空にある。

彼:「ちょっと手伝ってくれませんか。」

僕:「何をすれば良いの。」

彼:「これから凧をだんだん降ろしていくので、手の届く所まで来たら、凧を捕まえて地面に降ろしてくれなませんか。」

僕:「オッケー。」

だんだんと降りてきた凧を、さっと腕で抱える。五メートルくらいある凧なのに、すごく軽い。凧の「骨」の部分まで、空気を入れて膨らませたプラスチックで出来ている。

しばらくして、凧の「離陸」の手伝いもした。凧を風に向かって掲げ、彼が合図をしたら、パッと手を放すのだ。ちょうど良いタイミングで放せたようで、凧と一緒に空に舞い上がらなくて済んだ。

 砂浜から岩場に泳いでいくと、小さめだがウニが沢山いるのが見える。そう言えば、ニューポートの近くで、ひとりの男性が、腰まで水に浸かり、手袋をはめて何か黒いものを水の中から拾い上げているのを見た。あれはウニだったのだ。刺身と一緒に、ウニも今晩の食膳に乗せたいのは山々だが、厚い手袋とシュノーケル、足ヒレがないと、ウニを拾うのはちょっと難しい。

 泳ぎ終わって、ペンションに戻る階段を上がるとき、足が重いのに驚く。そういえばこの二日間、起伏のある山道や海岸を、連日十五キロ以上歩いたことになる。足が疲れているのも当然か。

 その夜はまた刺身。白ワインと刺身が良く合う。僕は下手な日本酒より、白ワインの方が刺身に合うと思う。もちろん美味しい日本酒があればそれにこしたことがないが。

 腕の肘からした、足の膝から下、そして顔が日焼けでピリピリする。ワインの後に、ギリシアの地酒、ウーゾの二杯飲み、九時半には眠ってしまう。

 

降りてきた凧をキャッチする。こんな大きな物が、驚くほど軽い。

 

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