耄碌爺さんの繰言

 

右上の岩山の上に白い教会とアンテナが見える。あそこまで登った。

 

灯台を後にし、車でペンションに戻る。インスタントラーメンで昼食。その後、前の階段を降りて砂浜へ行く。パラソルを立てようとするが、風が強くてなかなか立たない。やっと立てても何度も飛ばされた。その風を利用して、カイトサーフィンをしている人がいる。凧を揚げて、その凧に引っ張ってもらって、サーフィンをするというやつ。ウィンドーサーフィンよりはるかに難しそうだ。サーファーは、すごいスピードで動き、時々凧に引っ張られて、空中に舞い上がっている。 

 水温は十八度から二十度というところ。水に入ると、身体がしゃきっとする。しかし、風があって波が高いので、横から波を受けながら泳ぐと、身体がローリングしてしまい、少し泳ぎにくい。しかし、基本的にある程度波のある所で泳ぐ方が、鏡のような水面を泳いでいるより、エキサイティングで、僕は好きだ。

 一時間ほど浜にいて、部屋に戻る。その一時間だけで、またかなり日焼けした。シャワーを浴びる。まだ四時前。まだまだ陽は高い。もう少しドライブしてみることにする。一昨日アノ・メーラの村へ行ったとき、「探索」に行ったマユミが、山の上から、綺麗な湾が見えたという。そこへ行ってみることに決定。

 ミコノス島の南側の海岸は、パラダイスビーチ等、観光開発が進んでいるが、北側の海岸はまだ手付かずの自然が残っているという。そのせいか、道路標識も小さく、いい加減。

何度か道を間違えながら辿り着いた、フタイラ湾は、そんな「手付かず」の海岸だった。なだらかに湾曲した砂浜、そこにいるのは数人だけ。売店も、デッキチェアも、駐車場すらない。湾の奥にあるので、波は静か。まるで湖か池の畔にいるよう。水は澄んでおり底がはっきり見える。「この世の楽園」チックな場所であった。マユミは早速その、「この世の楽園」で泳いでいる。遠くに、午前中に登った山頂に教会のある尖った山が見える。

 その後、僕達は、近くにある、パノルモスというビーチと、アギア・ソスティスというビーチを訪れた。パノルモスに一軒だけレストランがあり、若者がビーチバレーをしていたが、それ以外は店もない、静かな砂浜だった。確かに、島の北側は未開発というのは当たっている。そして、それが良い。水の色はどこもコバルトブルー。素晴らしい色をしている。

 太陽はまだまだ高いが、そろそろ腹も減ってきたので、ペンションに戻ることにする。帰りの車の中、時計が六時を指しているのを確認してから、マユミに聞く。

僕:「今何時?」

妻:「もう六時。」

僕:「何、耄碌爺(もうろくじじい)ですと。何ということを言うんです、失礼な。親しき仲にも礼儀ありというではないですか。」

と耄碌爺さんの真似をする。マユミは笑い転げているが、妻はこの手の「誘導尋問」に素直に引っかかってくれるので、ボケ甲斐があるというもの。

 

ちょっと現実離れした雰囲気のフタイラ湾の風景。

 

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