面白かった?

 

ピカデリー劇場。二階席は傾斜がきつく、上にミニスカートの女性がいると、目のやり場に困る。

 

歴史背景を知っていたことも、舞台を楽しめたひとつの理由だと思う。米国の移民時代。発展。北部と南部の対立と南北戦争、北部の勝利と南部の衰退。ニューヨークの発展。世界恐慌。ニューディール政策。第二次世界大戦。コンピューターの時代。そしてリーマン・ショック。背景を知っていたことで、登場人物の台詞に、何とかついて行けた。

 三時間半に渡る公演が終わり、舞台が跳ねたのが十時半。カーテンコールが四度か五度繰り返される。もちろん、舞台に立ってお辞儀をするのは三人だけ。しかし、

「三人の俳優さんに、ずいぶん負担の大きな舞台やね。」

と僕は三人に同情したくなった。三時間舞台に出ずっぱり。膨大な量の台詞。頻繁に変わる役割。お互いの絶妙の掛け合い。この舞台で演じる前に、俳優と演出家が、どれだけの時間を稽古に使ったのか、とても想像できない。

 舞台が終わってから、隣に座っていたインド人のお兄ちゃんに、

「面白かった?」

と聞いた。

「うん、面白かった。」

と彼。

「劇場はときどき来るの?」

と僕が聞くと、

「実は今日が初めてなんだ。切符が余ってるからって、誘われて。」

何だ、僕と一緒。偉そうなことを書いているが、実はこの僕も、ロンドンで「戯曲」を見るのは初めてだった。オペラとミュージカルは好きなので、何十回と見たし、クラシックのコンサートを聴きに劇場へ行ったことも何十回もあるんだけど、不思議に「台詞だけの舞台」を見たのはその日が初めてだった。

「どうせ英語のネイティブではないし、台詞だけ聞いても、よう分からんし、つまらんやろ。」

と決めて敬遠していたのである。ところがどっこい、台詞だけの舞台もなかなか面白かった。

 出演していた、サイモン・ラッセル・ビールは有名なシェイクスピア俳優、アダム・ゴドリーは映画「チャーリーとチョコレート工場」などに出演、ベン・マイルズも多くの映画、テレビドラマに出演したとのこと。三人とも、英国では結構有名な人たちらしい。「リーマン・トリロジー」、つまり「三部作」であるが、別に続編があるわけでなく、劇が三部構成になり、それぞれが独立しているので、そう名付けられたようだ。この作品が、米国人でなく、イタリア人により、イタリア語で書かれたというのが、意外であり、面白い。

 劇場を出て、六人で地下鉄の駅のあるレスター・スクエアに向かう。夜の十一時前。でもまだ気温は二十五度以上ありそうだった。街は朝夕のラッシュ時のように街は混んでいる。仕事の移動で使った、キックスクーターを押すのが大変だった。

 

<了>

 

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