旅の目標

 

三月中旬、桜の花にはまだちょっと早すぎた。ポチポチ咲き始めてはいたけど。

 

へへへ。久しぶり。そう、昨日の夜日本から帰ってきたの。時差ボケで疲れているかって。いきなり仕事が忙しくて、そんなことを感じている暇がないね。日本はどうだったって。うん、色々出来てよかったよ。

毎回日本に帰るとき、今回はこれをしようという「目標」を掲げているんだ。たいしたものじゃないよ。沢山でもないし。「新しく出来た新幹線に乗ろう」とか、そんな感じ。今回の目標は「コメディー」と「お風呂」。これまでテレビやユーチューブでしか見たことがなかった「コメディー」をライブで見る。そして、色々なところで、できるだけ沢山のお風呂に入る。もちろん、日本へる帰る最大の目的は、京都の母親たちがどれほど元気かのチェックすることなんだけど。僕にはふたり母がいる、「生母」と「継母」。一度言ったことがあるよね。母親たちには毎週土曜日に電話をしてる。元気かと尋ねると、

「元気元気。」

という答えがいつも返ってくるけど。本当にどれだけ元気なのか、時々チェックしないとね。

三月十六日、きみと一緒に昼食を取って、一通り仕事を片付けた後、午後四時にはタクシーでヒースロー空港に向かったの。飛行機は午後八時だし、そんなに早く出る必要もないんだけど、オフィスにいるとまた仕事が入ってくるでしょ。逃げ出したわけ。ヒースローの第二ターミナルからの出発だったの。このターミナルは永らく建て替えの工事をやっていて、一年前にオープンしたばかり。使うのは初めてだったんだけど、滑走路の下を潜って、行けども行けどもなかなか搭乗ゲートに辿り着かない。延々と歩いて十五分。これって一キロメートル以上あるよ。自転車でも用意してくれないかな。

夜八時発のアシアナ航空という韓国の飛行機でまずソウルに向かい、ソウルで乗り換えて翌日の夜に大阪に着くという日程だったの。韓国の飛行機会社は個人的に好き。だって、キャビンアテンダントのお姉さんが皆若くてきれいなんだもん。「BA」とか「ルフトハンザ」の女性客室乗務員って、結構年配のおばさんが多くて、何か、自分のお母さんに面倒見られているような気がするんだよね。アシアナ航空のお姉さんたちは、髪を後ろにまとめて「お団子」を作って、スタイルも抜群、お肌もきれい。英語は余りお上手でないけど、そんなの可愛かったら関係ない。えっ、「中年のおっさん」になってる?いいじゃん、どうせおいらは中年のおっさんなんだもん。

ソウル行きの飛行機の晩御飯は必ず「ビビンバ」なの。「ビビンバ」って知ってる?ご飯に、野菜とか、肉とか、色々な具を入れて、それに赤い「唐辛子のペースト」を入れて、グッチャグッチャと混ぜて食べる。インドに「ビリアーニ」って言う混ぜご飯があるでしょう。あの雰囲気かな。ところで、昔は日本行きの飛行機に乗ると、晩御飯に必ず「蕎麦」が出たの。ちょっとダークな日本のヌードルで、ソースにディップして食べるんだけど。JALの飛行機の中で食べるから「ジャルソバ」。ええっ。意味が分からないって。無視してください。

 

日本のお風呂は、身体を清潔にする以上に、心を和ませることを期待して作られているよう。

 

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