国際的飲み会

 

ロンドンを訪れたオオツカGとミレニアムブリッジとセント・ポール寺院をバックに。

 

同窓会の翌日、九月二十三日、振替休日の夕方、「国際的飲み会」が開かれることになっていた。何故「国際的」なのかを説明するためには、今年の五月に遡らねばならない。僕は五月のある日、ユーコから一通のメールを受け取った。そこにはユーコとオオツカGの「ツーショット」の写真が添付してあった。携帯で写したものらしい。オオツカGは中学、高校の同級生、僕らの学年の「出世頭」、ノーベル賞をもらった山中伸弥教授と同じ大学の教授である。ともかく、彼は、米国のパームスプリングスであった学会の帰り道にロサンゼルスに寄り、ユーコと一緒に晩御飯を食べたらしい。

そのメールを受け取って間もなく、今度はオオツカGからメールがあった。

「学会で六月にそっちに行くから会えないか。」

とのこと。一も二もない。会います会います。六月のある金曜日、僕は彼をヒースロー空港に迎え、その日は一緒に晩飯を食い、翌日はテムズ河のほとりを二人で散歩した。ふたりの中年男が早朝の人通りはまだまばらなテムズ河畔を歩く。なかなか味のあるひと時だった。

僕はその日まで、彼が飛行機の乗り換えか何かでロンドンに立ち寄るのだと思っていた。しかし、実は学会の開かれたのはアムステルダム。彼は週末に、自分の金と時間を使って、わざわざ僕に会うために、ロンドンに来てくれたのであった。これには僕も感動した。日曜日の昼、ヒースロー空港で彼と別れるとき、

「今度は京都で飲もうぜ。出来ればユーコも一緒に。」

と彼と約束した。

幸い、今回の同窓会に合わせて、ユーコも米国から一時帰国してくれることになった。それで、ロサンゼルス、ロンドンに続き、今回は京都で「国際的飲み会」の第三部が開かれることになったのだ。メンバーはオオツカG、ユーコに僕に加え、通訳、翻訳者として活躍中のヨリコの四人である。このメンバーはなかなか凄い。何と、最初から最後まで全て英語で会話ができてしまう。そんなことが可能でも、実際は日本語で話すことになると思うが。

僕は、最初飲み会の会場として、昨年ユーコと一緒に行って気に入った、三条京阪の居酒屋「伏見」を予定していた。庶民的な雰囲気と、そこで食った「アワビ」や、「サンマの刺身」の味が忘れられなかったからだ。しかし、その店にはカウンターしかない。

「四人でカウンターに座ったら『デュークエイセス』か『ダークダックス』状態になるやん。端と端の人はどうやって喋るの。」

とユーコが書いてきた。

「『デュークエイセス』とか『ダークダックス』とか、ちょっと古すぎるで。せめて『SMAP』って言えへんの?」

と僕は書いた。そうすると、オオツカGからすぐにメールが来た。

「『SMAP』は五人や。」

う〜ん、やっぱり知ったかぶりはやめた方がいい。結局、会場はオオツカGが予約してくれた、四条の「個室居酒屋」になった。

 

(僕を除き)英語の達人が揃った国際的飲み会のメンバー。

 

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