みたらしまつり

 

気持ちええわあ、ずっとここにいたいくらい。

 

 特急「サンダーバード」が京都駅に到着、ホームに降り立つ。午後二時前。

「わあ〜熱風や。」

「暑い」というより「熱い」空気が僕を包んだ。祇園祭の頃は、天候も不安定だったが、結構涼しかった。三十度行くか行かないかという程度。金沢も結構涼しく、扇風機は使っていたが、エアコンを点ける必要もなかった。京都に戻った時、それまでの天候が「例外」であったことを知った。

 その日は、最高気温が三十五度。「土用」の時期では、京都においては「普通」の気温なのだ。でも、「涼しい国から来た」僕には、かなり圧迫感のある暑さ。母の家に戻ると結構涼しい。それもそのはず、僕が帰るのを見越して、母が一階に冷房を入れておいてくれたから。荷物を置くために二階に上がる。熱気がすごい。荷物を整理する十分間に、大量の汗をかいた。とても長くはいられない。

 もうひとつの問題は、どのように眠るかということ。僕は冷房をかけた部屋で眠るのが好きではない。体調を崩しやすいのだ。二階で寝ていたのだが、夜になると冷房を入れる。眠る際に冷房を切るのだが、直ぐに目が覚める。顔から首にかけて汗びっしょり。窓を開けるが、涼しい風が入って来るのは、何時も真夜中過ぎになってから。

 京都に戻って二日目、暑さに慣れるのに苦労しているところに、友人のGくんからのお誘い、

「一緒に、下鴨神社の『みたらしまつり』、行かへん?」

確か、水に足を浸ける行事だった。面白そう。Gくんの家は僕の家のすぐ近く。僕たちは、翌朝八時に待ち合わせ、歩いて下鴨神社に向かうことにした。

 翌朝、鞍馬口通りを東に向かって歩き始める。鴨川に架かる出雲路橋を渡って歩く。八時なのにもう十分暑い。下鴨神社には三十分余で着いたが、僕はもう汗びっしょり。

「京都はソロモン諸島より暑い。」

とかつてソロモンに住んでいたGくん。手を清める水を頭からふりかけ、「糺の森」で休む。さすがに樹木の多い神社だけあって、木々を通り抜ける風は気持ちよく、一息つけた。

 九時から、一番乗りで「みたらしまつり」に参加する。何となく「みたらしだんご」を思い浮かべるが、「みたらしだんご」は、この祭りが由来だという説もある。漢字では「御手洗祭」と書き、足を水に浸け、ろうそくを奉納し、「穢れ」を払い、無病息災を願うという。「足浸け神事」とも呼ばれている。門の所で、三百円を払って、靴を入れるビニール袋と、蝋燭をもらう。そして、石の橋を潜って、小川の水の中に入って行く。水は結構冷たい。膝くらいまでの深さ。

「こら、気持ちがええわ。」

火照った身体が足から冷やされていく。「穢れ」を払うなら、季節は何時でもいいようなものだが、何故この行事が真夏に行われているのか、この時よく分かった。

 

蝋燭をもらって、火を点け、奉納する。暗くなってからだと、特に美しいとのこと。

 

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