そうだ絵を描こう

 

近くの船岡山から比叡山を望む。船岡山のセミの声、二百メートルくらい離れている家でも聞こえるほどの大音量。

 

金沢から戻って、京都には約十日間滞在した。その間何をしていたのか。

「ひたすらゴロゴロしていた。」

本当に殆どどこへも行かず、母の家で、ゴロゴロしていたのである。折しも、コロナ感染者数は、毎日上昇を続け、京都でも、一日五千人台記録されていた。軽症でテストを受けていない人を含めれば、おそらくこの倍はいるかも。それに気温は毎日上昇を続け、体温を超える日が出始める。

気温が三十七度を超えた日に買い物へ。ショッピングモールの入り口に、消毒液と、体温測定器が設置されていたので、遊び半分で、体温測定器に顔を近づける。「三十六度九分」との表示。

「これって、僕の体温?それとも、ここの気温?」

そもそも、体温測定器は、気温が体温を超える場合、測定可能なのだろうか。こんな日は、自転車で走っていても、全然涼しくない。ジリジリと送風機付きのオーブンで焼かれているような気がする。扇風機をつけても熱風が吹き付けるだけ。昼から母が階下にエアコンを点けると、ひたすらそこで過ごす。

それでも、一日一度は汗もかきたい。汗腺を鍛えた方が、暑さに対抗できるような気がする。それで、二日に一度、早朝、鴨川までジョギングに出掛ける。六時前には、まだ気温が二十七、二十八度くらいなので、走れることは走れる。しかし、帰り道には、

「ゆっくり走っているつもりやのに、なんで、こんなに息苦しいねん。」

と感じる。途中から歩く。

「熱中症警戒アラート」なるものが毎日発令され、「日中は屋外に出ないでください」と呼びかけられる。

「言われんでも出えへんわ。」

と言うわけで、僕は、ずっと家でゴロゴロすることになるのである。友だちにメールでそのことを言うと、

「お母さんがお元気で、自分の好きなことをして家でゴロゴロしてるって最高ですね。退屈かもしれないけど、それが幸せなんですよ。」

と返信が来た。その通りなんだろうな。

ただ、僕はこの事態をある程度予測していた。暑さではなく、コロナ感染拡大のため、家を出ることができなくなるかも、それは考えていた。それで、その場合、楽しく過ごすために、絵を描く道具を一式持参していたのである。今回はそれが役に立った、僕はひたすら絵を描いて過ごした。幸い、題材は祇園祭を見たので、そこで撮った写真が沢山あり、材料には事欠かない。僕は、久しぶりに、一日中絵を描いていた。時間はふんだんにあるので丁寧に仕上げることができるし。

 

久々に友人と外でランチ。四百年続く洛北の「平八茶屋」。庭の緑がきれいで、吹き抜ける風は市内に比べ涼しい。

 

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