皆に会えた

 

英国にセミはいない。それだけに、セミの声が耳と心に響く。昔は少なかったクマゼミが増えていた。

 

K先生のお宅から戻り、義母に、

「先生の奥さん、マユミの同級生やった。」

と言うと、義母もびっくり。早速、二水高校の卒業アルバムを引っ張り出してきた。(当然、僕が数時間前に見たのと同じ)

「どの人が先生の奥さん?」

僕が四十年前のK夫人を指差した。

今回は、僕が日本に到着する前から、日本のコロナ感染者数が増え始め、僕が関空に着いた週には、京都府や石川県で、連日、過去最高の感染者数を記録していた。昨年一月に帰国した際も、感染者急増の時期で、当時の菅首相が「緊急事態宣言」を出すの出さないのと話題になっていた。今回もまた。どうも、僕が日本に向かうと日本でのコロナ感染者が増えるという、奇妙なジンクスがあるようだ。今回、金沢の親戚の中には、医療関係にお勤めの方もいるので、皆に会うのは無理だろうと思っていた。金沢に着いても、僕は早朝散歩に行く外は、家でじっくり義母と話をし、絵を描いて過ごすつもりだった。

着いた日、K先生の家に行く準備をしていると、玄関のベルが鳴る。出てみると、義弟が立っていた。妻の妹の旦那である。お酒が好きで、僕が金沢に帰ると一緒に飲む仲。彼は、病院に勤めているので、特にコロナ感染には気を遣う立場。外食なども一切控えていると聞いていた。それで、今回は会えないと思っていた。

「モトさん、せっかく来られたと聞いたから、ちょっこと顔だけ見よと思うて。」

と義弟。二人とも、二メートル離れた場所で、グータッチをする。短い時間の会話だったが、これは予想外で嬉しかった。

 翌日は、義理の妹と甥たちが来てくれて、義母と五人で焼肉を食べに行った。妹も保育士なので、感染には気を遣う立場、早い時間に店に行く。皆に会うのは三年ぶり。楽しい時間だった。しかし、その日、僕はオンラインの「講師会議」が午後九時からあり(英国は午後一時)、先に終わって会議に参加。会議は延々、真夜中過ぎまで続いた。

 これだけ皆に会えて、幸せだと思っていたら、更に嬉しいサプライズが。翌朝、義母が、

「妹夫婦が今晩一緒に寿司を食べに行こうって。」

義母の妹さんとそのご主人である。前回僕が金沢に来たのは、息子の結婚式。叔母はちょうどそのとき病気で参加しなかった。お二人に会うのは五年ぶりくらい。

 夕方、直ぐ近くの回転寿司に行き、そこで叔母夫婦に再会。(ちなみに、金沢の回転寿司を馬鹿にしてはいけない。京都の高級寿司屋で食うより美味いと思うことがある。)

「うわあ、御無沙汰しています。お元気でしたか?」

八十歳になる叔父は元気で、今でも週に一度ゴルフ、毎朝ウェートトレーニングをしているとのこと。旅行好きの叔父が、昔行った国々の話をするのを、透明アクリル板越しに、僕は楽しく聞いていた。

 

うちの家族が皆ここへ来るのを楽しみにしている、回転寿司。(「寿司食いねえ」のホームページより)

 

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