レスキュー部員

 

昼過ぎに下山を始める。相変わらず素晴らしい天気。

 

運転をする事務局長のGくんは「いらち」である。「いらち」とは関西弁で「せっかち」のこと。

「もう〜、前の車何とかならへん?何をトロトロ走っとんねん。」

前の車が制限速度より遅く走っていると、ブツブツ言っている。

「昔と変わらんなあ。」

と思う。今日、一緒にいるメンバーの大半は高校や中学の同級生だ。何人かとは、同窓会で出会ってはいるが、先ほどのJくんのように四十何年ぶりで会った人もいる。しかし、皆、最初から溶け込んでしまえる。全然違和感がない。やはり同級生は違う。また、初めて会った人たちとも、直ぐに仲良くなれた。やはり、一緒に汗を流すというのは、交流を深めるのに、良い方法なんだ。

八時半過ぎに、三台の車が集合。十三人で、九時前から登り始める。それにしても良い天気。隊長のMくんの予定では、登り二時間半、下り二時間。日も短くなってきたので、早く登って、早く降りて来ちゃおうという計画らしい。蛇谷ガ峰の標高は九百三メートル。駐車場まで結構車で坂を上がってきたので、実際に足で登る部分の標高差は七百メートルくらいだと思う。

最後尾で歩く。まだその時点でも余り自信がなかったし、一番後ろで、一番遅い人と歩いていれば、無理なく行けると思ったから。最初は皆パーカーを着ていたが、暑くなってきて、途中の休憩で脱いだ。休憩のときに、誰からともなしに、チョコレートが回って来る。自分でも買って行ったが、いつも誰かのチョコが回ってくるので結局食べなかった。台風のせいで、倒木が多い。何度も、道を塞いだ木の幹を跨ぎながら、登っていく。ふたりの女性が少し遅れ出したので、彼女たちと一緒にノンビリと上がっていく。

十一時頃に頂上に到着。僕自身は、まだまだ体力に余裕があった。完璧なコンディションの下、素晴らしい景色に出会えたことは、先ほど書いた通り。広報部長Tくんによる、自動シャッターを使った記念撮影の後、少し早いが、弁当を食べ始める。用意の良い人は、魔法ビンにお湯を入れてきて、カップヌードルを作ったり、コーヒーを淹れたりしている。さすがに、慣れておられる方は準備が良い。僕も、母に作ってもらった握り飯を食べる。温かいコーヒーももらう。そして、スイーツ部長から、「栗の渋皮煮」が一個ずつ配られた。

景色と昼食を楽しんでから、下山にかかる。十分ほど行ったところでアクシデント。上りでちょっと遅れ気味だったOさんの足が痙攣。マラソンをやっていた僕は、実は、痙攣を治す専門家なのだ。自分の痙攣も治したし、他人の痙攣の対処も何度もやった。

「どこが痛いの?」

Oさんに聞くと、膝の上だという。下り坂でブレーキをかけると、太腿の前面の筋肉を使うことになる。典型的な、下り坂での痙攣だ。僕は、彼女にそれに効くストレッチングを教えてあげ、彼女は間もなく歩けるようになった。ちょっと役に立てて嬉しい。

 

途中に吊り橋があった。

 

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