記念樹とウニの写真

 

植樹をする情報システム部の面々。

 

 翌朝、時差ボケでフラフラするが、とにかく六時に朝食を掻き込み車で出勤する。こんなとき、車の運転は特に注意しなければ。相変わらず寒い。気温は三度くらいしかない。ダウンジャケットと手袋がなければ、まだ外へ出られない。

 出勤し、午前中は溜まっているメールを読む。昨日、パリのシャルル・ド・ゴール空港で、六百通を三百通くらいまで減らしたが、それでも残りの三百は内容を読んで、必要とあらば返事を書かねばならない。それに昼間までかかった。昼に四十五分ほど散歩して、気分転換をする。

 英国へ帰国後、時差ボケで本当に辛いのは、日本が真夜中に差し掛かる昼からなのだ。しかし、その日はおあつらえ向きの仕事が待っていた。肉体労働。十二月に亡くなった同僚の記念樹を、その日の午後植えることになっていたのだ。

「モトさん、手伝って。」

と同僚のエミに言われ、僕は車のトランクの中に積んであるスコップを取りに行った。(車が雪で動かなくなったときのために、いつも長靴とスコップは用意してある。)

 僕がいつも車を停める場所から数メートル離れた場所には、既に課の面々により穴が掘ってあった。その日は、そこにサクラの木を植え、添え木をして、堆肥と土を被せ、水をかけるのだ。

同僚のひとりは涙を浮かべながらスコップを振るっている。木が植え終わったあと、記念の立て札が課長のアンディによって立てられた。僕たちはその前で、守衛さんに頼んで記念写真を撮った。

 「ホタルイカフリーク」のユーコには、日本で撮ったホタルイカの握り寿司の写真をメールで送る。数日後、彼女からメールが届いた。そこには山盛りになったウニの写真が添付されていた。

 ティエリーにも、彼が少し落ち着いたかなと思われる二週間後にメールを書いた。二日後に返事が来た。母上の葬儀は無事終わったとのこと。

「悲しい出来事だったけど、久しぶりに息子や、親戚や友人に会えたのはよかった。」

と、そこには書いてあった。

 「スチュワーデスの謎」ついて妻に話すと、彼女は笑い出した。

「後ろが細くなっている、Tバックっていう下着があるの。それを履くと線がでないのよ。私は履き心地が悪いので嫌いだけど。フランスン人のスチュワーデスは皆そんなパンツを履いていたのね。」

今回も、謎はあっさりと解けた。

 G君からは次の赴任地がヨルダンになったと連絡が来た。ヨルダンなら英国から近い。また是非遊びに行こうと思った。

 

ユーコが送ってきた、ウニの写真。ロサンゼルスでは食べられるそう。よだれが出る。

 

<了>

 

<戻る>