ミステリーの意外な幕切れ

 

父が見せてくれた姉の書いた本。姉はこんな駄文ではなくちゃんとした本を書いている。

 

「サンダーバード」は午後四時過ぎに京都駅に到着。鞍馬口の生母の家に戻る。明日は父の家で夕食を食べることになっていた。明日は終日父と一緒に過ごそうと思う。

プラス、明日は継母の誕生日。京都に着くと先ず花屋へ行く。

「明日、誕生日の花束が必要なんですけど、予算は三千円くらい、何とかできます?」

「バラ六本ほどとカスミソウでどうどす?」

「ほな、それでお願いします。」

そんな会話があって、花束が注文された。

 その後、例の如く、銭湯「船岡温泉」へ。「外人」ふたり組みと話をする。彼らはオーストラリア人。先週の日曜日、東京マラソンを走ったのとのこと。三万二千人も参加者があり、雨と寒さの中、三十分以上スタートで待っていたとのこと。ご苦労さんでした。せめて銭湯で温まっていって下さい。

 翌朝三月五日朝九時、花屋で注文したバラとカスミソウの花束を受け取り、父の家へ。お母さん、お誕生日おめでとう。

「外国では何かにつけ花束を送るのが習慣なんよ。」

と、兄弟がしばらく海外に住んでいて、少し海外通の継母が言う。すると、父が突然唄いだした、

「花束抱えて、アイルランドの村娘〜」

父は昔から真面目一方の性格、家で歌を唄ったなどという記憶がない。継母と僕はまたまたあっけにとられて顔を見合わせる。

「ちょっと、お父ちゃん、大丈夫か。」

「ディック・ミネやったかなあ。」

と父が言った。

 金沢の義父から電話があった。

「モトヒロさん、靴下見つかったよ。」

「ええ、どこで?」

「家の前の道路。」

僕は寝るときに脱いだ服を全て山のように積んでおいた。そのとき、靴下の一方がジャケットの袖の中に入ったのだ。そのジャケットを持って降り、玄関先で着たのを覚えている。そのとき、袖の中に入っていた靴下が落ちたのだった。「最大ミステリー」は、意外にあっけない幕切れとなった。

その日は本当にずっと父の傍で過ごした。一緒にコタツに入り、時々思い出したように話をしながら。この旅行記のここまでは、そのとき父の横で書かれたものだ。夕方また船岡温泉へ行く。帰りにコンビニでビールを買って帰る。

その日の夕食は父と継母と一緒のスキ焼を食べた。霜降りの肉。これはヨーロッパにない。日本の牛肉、世界一美味しいと思う。高いけれど。

銭湯から戻るとスキ焼の用意が出来ていた。霜降りの肉が美味しそう。

 

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