飛行機オタクの薀蓄

 

あれれ、見慣れない飛行機が

 

今回の旅は、パリのシャルル・ド・ゴール空港で乗り換えて、関西空港に向かうことになっている。

ロンドンからパリまでは一時間弱、もう何十回も辿ったコース。退屈な飛行だ。僕はエールフランスの機内誌をパラパラと見ていた。どの航空会社の機内誌にも、現在機内でやっている映画の番組の他に、その会社が現在保有している航空機の一覧表が出ている。僕はそれを見るのが好き。要するに僕は「飛行機オタク」なのだ。鉄道オタクは「鉄ちゃん」、飛行機オタクは何ていうのかな。「ヒコちゃん」?何だか彦根の「ゆるキャラ」みたい。

前のポケットに入っている手垢のついた機内誌には、エールフランスの持っている飛行機の種類、数、エンジン、最大積載量、速度、乗客のキャパシティー、就航機数などが載っている。そこには、「エアバスA三八〇」五百五十七人乗り、一機となっている。「エアバスA三八〇」は二年前から就航しているオール二階建てのスーパージャンボ。これが最近エールフランスにも引き渡された。

ところで、一度某航空会社の機内誌の所有機案内を見ていて、

「こりゃなんじゃ。」

と驚いたことがあった。縮尺がいい加減で、どの飛行機の絵も同じ大きさに描かれていた。これじゃあ、どれが大型機、どれが小型機かが分かって分らないじゃないの。ジャンボ機も、プロペラ機も全て同じ大きさに書いてあるのはよくない。その点、エールフランスの機内誌は縮尺がしっかりしていてよろしい。

上にも書いたが、エールフランスは二〇一〇年二月一日現在、只一機「スーパージャンボ」、総二階建ての「エアバスA三八〇」を所有していた。僕は、この機種の第一号機がシンガポール航空に売り渡されてシドニー線に投入されたとき、シドニー空港で見ているはずなのだが、それがどうしても思いさせない。それがくやしい。

飛行機はパリへ向かって降下する。雲は幾つもの層になっている。ひとつの雲の層を突き抜けると、雲のない空間があり、他の飛行機なども見える。そして、更にもうひとつ下の雲の層を飛行機は突き抜けて更に降りていく。雲の層に入るたびに飛行機は揺れる。

乗り換えのため、「おサルの電車」に乗り、ターミナルを移動する。「E」ターミナルへ向かうエスカレーターを上っているとき、横に見慣れない大型機が停まっているのに気付いた。僕は叫んだ。

「ラッキ〜!」

今のところフランスに一機しかない「エアバスA三八〇」を、幸いなことに、この目で初めて見ることができたのだ。「飛行機オタク」は僕だけでないらしく、数人の人々がスーパージャンボをカメラに収めていた。思えば最近は、かつての国際線の花形、「ジャンボ機」、「ボーイング七四七」を見る機会がめっきり減ってしまった。倒産した日航は全てのジャンボ機を退役させるという。隔世の感がある。

 

ラッキー、スーパージャンボだった。全部二階建!

 

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