「見えない者」

原題Den du inte ser

ドイツ語題:Den du nicht siehst

 

 

<はじめに>

 

バルト海に浮かぶ島、ゴットランドを舞台にしたシリーズの第一作。作者のユングステッドは、島を一種の密室に見立てたミステリーを目指したという。一応、警視アンドレス・クヌタスが捜査を率いるが、彼の独壇場ではなく、チームプレーで、島を席巻する連続女性殺人事件に挑む。

 

<ストーリー>

 

ペール・ベリダルとヘレナ・ヒラーストレームは六月、ゴットランド島の別荘で短い休暇を過ごしている。彼らは友人の夫婦、エマとオーレ、エファとリカルド、それにクリスティアンという島に住む友人達を招いてパーティーをしている。宴がたけなわで皆がダンスをしているとき、ヘレナが泣きながらトイレに駆け込む。オーレはクリスティアンに殴りかかるが、周囲の人間に止められる。この事件でパーティーはお開きとなる。

翌朝へレナは目覚め、前夜のことを振り返る。ヘレナがクリスティアンと余りにも親しげに踊っているのに嫉妬したオーレが彼女をクリスティアンから引き離し、ベランダに呼び出した。ヘレナが先にオーレに手を出し、オーレがその後クリスティアンに殴りかかったのだった。嫉妬深いオーレであるが、あれほど激しく反応をしたのは初めてであった。ヘレナはまだ眠っているオーレを別荘に残し、犬と一緒に海岸に散歩に出かける。

外は数メートル先も見えない、深い霧であった。その霧の中、何者かがヘレナに忍び寄る。その男はまず犬を殺し、その後へレナに襲い掛かる。彼女と犬の死体は、その後、散歩をしていた地元民によって発見される。ヘレナの死体は全裸で血まみれ、口には彼女のパンティーが押し込まれていた。犬は首を切られていた。通報を受けた警視のアンデルス・クヌタスと部下のカリン・ヤコブソンが現場に駆けつける。

ストックホルムのテレビ局の編成局長は、ニュースも活気もない編成部を嘆いていた。スウェーデン・テレビ・ローカルニュースの記者ヨハン・ベリは、ニュースソースであるゴットランド島の退職警官から電話を受け、島で起こった殺人事件について知る。彼は、その日の午後の飛行機で、ゴットランドに飛ぶことにする。

そのとき、ある男が、荷物を持って、ボートハウスに入ろうとしていた。

クヌタスとヤコブソンは、殺されたヘレナのパートナーであるペール・ベリダルを訪れ、尋問をする。彼は、前夜の出来事と、ヘレナが行方不明になった事情について語る。クヌタスは捜査会議を招集し、部下に対してマスコミには一切事件については語るなと厳命する。その後の記者会見の後、クヌタスは記者のひとりであるヨハン・ベリに呼び止められる。被害者が全裸で口に下着が押し込まれていた等、事件の詳細がマスコミに漏れていることを知り、クヌタスは愕然とする。クヌタスは深夜家に戻る。彼は助産婦をしている妻のレアと、十二歳になる双子の娘と息子と一緒に暮らしていた。

男はボートハウスで目覚める。彼は女を殺したときの夢を見ていた。

翌朝、警察署に電話を入れたヨハンは、被害者のパートナーのオーレ・ベリダルが、殺人容疑で逮捕されたことを知る。ヨハンとカメラマンのペーターは、死体の第一発見者の家を訪れる。死体を発見した男は、そのショックで入院しており、彼の妹がふたりと話をした。ヨハンは、犬が首を切られていた等、現場のより詳細について知る。

クヌタスは、事件についてのイメージをつかむため、死体が発見された現場と、被害者の住んでいた別荘を訪れる。ヘレナの親友であったエマ・ヴィナーヴは、小学校の教諭であった。彼女は親友が惨殺されたショックで休みを取っていた。クヌタスは彼女に電話を入れ、至急会いたい旨を伝える。エマは警察署に出向くことを伝える。クヌタスは、ヘレナの家族、友人から事情聴取をするために、ヤコブソンとヴィトベリのふたりの捜査員を、ストックホルムに派遣することにする。

警察署を訪れたヨハンは、入り口でエマとぶつかりそうになる。彼と同僚のペーターは、第一発見者の妹とのインタビューを、ニュースで放映することを決める。また、ヨハンはエマとインタビューの約束を取り付け、彼女の家に向かう。ヨハンはエマにインタビューをするが、彼女の魅力の虜になってしまう。ヨハンはその取材の中で、ヘレナの別荘の隣人が、深夜三時に古い型の車の通る音を聞いていたことを知る、

ゴットランドでは長い間殺人事件はなかった上、ゴットランドの警察には、捜査員の数が少なかった。ヤコブソンとヴィトベリがストックホルムに向かうのと入れ替わりに、ストックホルム警視庁からキールゴルドとそのチームが応援に島にやって来る。ヘレナが殺された前夜のパーティーの客で、直後に島を離れて、事情聴取ができなかったクリスティアン・ノルドストレームが島に戻り、警察署でクヌタスと話す。ノルドストレームは、ヘレナとは昔からの友人であるが、彼女と特別な関係にあったことは否定する。しかし、彼の余りにもそつのない受け答えに、クヌタスはかえって疑念を抱く。幼いふたりの姉妹が、林の中で血の付いた斧を発見する。駆けつけた警察が調べたところ、斧の握りに残された諮問は、殺されたヘレナのパートナーのペール・ベリダルのものだった。

エマは夏休みの始まる前日に学校に戻るが、ショック状態は続いており、仕事が手につかない。エマが学校の帰り道カフェにいると、そこにヨハンが現れる。二人は話をし、別れ際にヨハンはエマにキスをする。

ペール・ベリダルが改めて容疑者として逮捕され、事件は解決したものという空気が流れる。ヨハンもゴッドランドからストックホルムに戻るが、彼はエマのことばかり考えている。

斧が発見され、ペール・ベリダルが逮捕されてから一週間が経った。ペールは、斧はヘレナの家に備え付けられていたもので、自分はそれで薪割りをしたので、指紋が残っているのは当然だと主張する。しかし、それが決めてとなって、彼は起訴されることになる。ストックホルムのヘレナの友人や家族からは、何も手掛かりになるような情報は得られない。

土曜日の夜、フリーダ・リンドは彼女の女友達とヴィスビューのクラブに飲みに来ていた。三十四歳の彼女は美容師で、一年前からゴットランド出身の夫と、三人の子供たちと一緒に島に住むようになっていた。ミニスカートに身を包む彼女は、自分の容姿に自身を持っていた。トイレに立ったフリーダは、バーで若い男に出会う。魅力的な男だと思ったフリーダはその男と一時間ほど話し込むが、男が鬘を付けていることを見破り、それでその男に見切りをつけて友人たちのところへ戻る。深夜、彼女は自転車で街から少し離れた家に戻る。しかし、彼女の後をつける男がいた。彼女は墓場の横でその男に捕まり、首を絞められる。

妻のフリーダが日曜日の朝になっても帰らないので、夫が警察に妻の行方不明を届ける。クヌタスは捜査員に召集をかけ、ヤコブソンにフリーダと一緒だった女友達への聞き取りを命じ、自分は夫に会うためにフリーダの家に向かう。夫は妻に最近何も変わったことはないと述べる。そのとき、クヌタスに、墓地で女性の死体が発見されたとの知らせが入る。フリーダであった。彼女は全裸で、身体中に刺し傷があった。そして、口にはパンティーが詰め込まれていた。

男は冷たい海に浸かっている。彼は母親の愛情を知らないで育った。彼は海岸のベンチの下に何かを隠しており、それが徐々に一杯になりつつある。

ストックホルムで放送局のパーティーに出ていたヨハンに、ゴットランドで新たな殺人が起こったという知らせが入る。彼はカメラマンのペーターと共に、ゴットランドに向かう。一方エマもずっとヨハンのことを考えて続けていた。彼女は最近夫のオーレと、心が通じなくなっていることを感じていた。そのとき、ラジオが、新たな女性殺害事件のニュースを伝える。

男はボートを漕いでいた。第一回目の殺人の際、凶器が発見されたのは失敗であった。同じ過ちは繰り返さないことを男は自分に言い聞かせる。

捜査会議が開かれる。クヌタスも他のメンバーも、ふたつの殺人が同一犯人によるものであるという意見で一致していた。殺されたふたりは三十代の半ばで、どちらも美人であった。またストックホルムにも住んでいた。二回目の殺人には、斧ではなくナイフが使われていた。犯人は何故凶器を変えたのか。また、フリーダがクラブで一緒にいた男性は誰なのか。疑問は深まる。

ゴットランドに着いたヨハンはエマに電話をかけ、会いたいという。エマも承知して、ふたりは会うことになる。

記者会見が行われる。その中で、拘留中だったヘレナのパートナー、ペールが釈放されたことが発表される。それは取りも直さず、警察がふたつの殺人を同一犯人と考えていることの証明であった。記者会見の後、クヌタスはゴットランドの郡長に呼び出される。郡長は観光シーズンを向かえたゴットランドが、殺人事件により観光客から避けられ、大きな経済的なダメージを受けることを心配していた。今回も、警察が発表していない事実が、ヨハンのテレビ局から流れた。クヌタスはヨハンに電話で、誰が情報を漏らしているのかと問い詰める。ヨハンは、情報源を明らかにはできないが、捜査班のメンバーからではないことは保障する。

ヨハンとエマは昼間、街中のイタリア料理店で会う。エマはヘレナには、パートナーのペールの他に別の男がいたと言う。しかし、それが誰であるかはエマも知らなかった。別れ際、ヨハンはエマにキスをする。ふたりの子供を抱えて教師になるための学校へ通っていたエマは、夫のオーレに助けられ、彼に恩義を感じていた。しかし、最近では、彼とセックスをすることが、苦痛になっていた。

男は家では両親の不仲、学校では同級生たちのいじめに遭い、自分の殻に閉じこもっていた。

ヤコブソンは、フリーダの勤めていた美容室を訪ね、その経営者と話をする。経営者の女性は、フリーダが男性客と軽口を交わし、特に男性客に人気があったことを告げる。しかし、フリーダが特定の男と関係していたことはないと言う。

クヌタスは、犯人が被害者を裸にしてパンティーを脱がせているが、強姦はしていないことを不思議に思う。そして、犯人が、被害者の行動を予め知っていたことから、犯人が特定の期間、被害者を観察していた可能性が高いと考える。

クヌタスは再びヘレナの高校の同級生であったクリスティアン・ノルドストレームを訪れる。彼はヘレナとは同じグループで一緒に遊び歩いていたが、彼女と肉体関係はなかったと言う。そして、ヘレナが高校生の頃、体育の教師と肉体関係があったことを述べる。クヌタスは最初の尋問の際、ヘレナと体育教師の情事については、誰も語らなかったことを不思議に思う。署に戻ったクヌタスは、その体育教師について、教育委員会に問い合わせる。そして、そのヤン・ハグマンという教師が事件の後すぐに転勤になったこと、彼の現在の住所、ハグマンの妻は数ヶ月前に首を吊って自殺していたことを知る。

捜査会議で、ヘレナと関係を持った体育教師のことが話題になり、クヌタス、ヤコブソン、キールゴルドの三人が、彼に会いに行くことになる。三人は車で出発する。クヌタスはキールゴルドをどうして好きになれないでいた。既に定年退職したハグマンは、一九八二年にエマと関係を持ったこと認める。しかし、それが同僚に見つかり、転勤させられてからは、一度もヘレナと会っていないと述べる。

ヨハンは数日間ゴットランドに滞在することになった。彼はエマを呼び出し、自分のホテルの部屋に誘う。エマも彼に従い、ふたりは肉体関係を持つ。ヨハンはストックホルムの喧騒から逃れて、ゴットランドに移り住むことを考え始めていた。

男は、同級生からのいじめを避けるために、休み時間の間中、トイレに隠れていた。

女性陶芸家のグニラ・オルソンは注文の締め切りを前に、作業に余念がなかった。作業を済ませた後、彼女は、友人とふたりだけの夏至の祭りのパーティーを予定していた。彼女は、物音を聞く。振り返った彼女は斧を振り上げた男を見る。彼女はその男を知っていた。グニラに電話をしても通じないことに疑念を感じた友人のセシリアは、グニラの家を訪れる。そこで、血まみれになって倒れているグニラを見つける。

同じく、親戚を招いての夏至の祭りの準備をしているクヌタスに、新たな殺人の知らせが入る。クヌタス、ヤコブソン、キールゴルドの三人は、一台の車で犯行現場へ向かう。

「これで先へ進めるので、何かが起こって良かった。」

というキールゴルドのコメントに激怒したクヌタスは、車を停め、キールゴルドを車から引きずり出そうする。ヤコブソンがふたりの間に割って入る。

犯行現場は、殺人死体を見慣れた警察官でさえも吐き気を催すような惨状であった。クヌタスは第一発見者のセシリアと話す。セシリアはグニラが一年前に外国から戻り、この場所に居を構え、陶芸を始めたことを告げる。鑑識が喘息のための吸入器を見つける。殺されたグニラは喘息持ちではなかったことが友人の証言で分かり、その吸入器は犯人が残していったものという可能性が強まる、

男は、授業の終わりが近づくと、家に逃げ帰る準備をしていた。

ヨハンは犯行の知らせを受けて、現場に向かう。クヌタスとヤコブソンは既に去った後であった。ヨハンは近くに住む女性に話を聞く。その女性は犬の散歩のために、頻繁にグニラ・オルソンの家の前を通っていた。隣人は、グニラが子供の頃から色々な問題を起こし、両親と上手くいっていなかったこと、数年前に両親が事故で亡くなったときも帰って来なかったこと、最近の数週間に、三十歳前後の若い長身の男性が出入りしていたこと、等を話す。その男は古いサーブに乗っていたという。

学校の帰り道、彼は同級生の一団に捕まり、殴る蹴るの乱暴を受ける。しかし、彼が小便を漏らしたので、他の子供たちは汚がって去る。彼はそのことを母親に言うことができない。母親は彼の言うことに徹底的に無関心であった。

警察で、新たな記者会見が行われる。三人の犠牲者を出したものの、まだ犯人逮捕の糸口さえ見つけられない警察に、マスコミの非難と質問が集中する。クヌタスはマスコミの質問に答えるが、答えているクヌタス自身が、自分の言葉に空虚さを感じる。

ヨハンはペーターと夏至の祭りの日、港の近くのバーへ飲みに行く。しかし、エマのことが常に頭にあり心から楽しめない。翌日彼はエマからの電話を受ける。彼女は夫と子供たちと一緒に義父母と義兄を訪れ夏至の祭りを祝ったが、気分がすぐれないと言って、先に独りでヴィスビューに帰ってきたという。エマはホテルにヨハンを訪れ、ヨハンが現れなくても、夫のオーレとの愛は冷めていたという。ふたりはまたベッドを共にする。

キールゴルドの調べで、ヘレナとグリーダは、ストックホルムで同じ頃に同じ場所で暮らしており、一緒のジムに通っていたという。ストックホルムでの接点を探るために、クヌタスとヤコブソンはストックホルムへ飛ぶ。彼はヘレナの夫をもう一度訪れ、ふたりの通っていたジムのオーナーと話すが、ふたりの接点は見つからない。

金曜日の午後、彼は再び子供たちの一団に拉致される。彼は学校の使っていない部屋に連れて行かれ、再び乱暴を受ける。今回、彼の口の中には彼自身の下着、パンツが押し込まれていた。

クヌタスとヤコブソンは、ヘレナの両親を訪れる。彼らは高級住宅街の大きな屋敷に住んでいた。両親はクヌタスに対して、娘のヘレナが体育教師のハグマンにより妊娠させられ、中絶手術を受けたことを話す。その後、ヘレナと両親の関係が悪化し、ヘレナは両親と口を聞かなくなったという。クヌタスはヘレナの部屋で、ハグマンの写真を発見する。グニラの作品を扱っていた美術商の女性は、仕事で一度ゴットランドに行ったとき、グニラがヘンリクという長身の男と一緒にいるのを目撃したという。またグリーダの父親は、グリーダが高校生の頃、職業軍人であった自分の転勤で、ゴッドランドにいたことを告げる。

オーレはエマに最近の彼女の不審な行動について問いただす。エマはこれまで何度も自分を助けてくれたオーレのことを考え、一旦は彼とまた一緒にやっていこうと考える。その頃、誰もいないボートハウスに、セックスにしようとして忍び込んだ若いカップルが、海岸のベンチの下に隠された、血まみれの衣服を発見する。

ヨハンのことを忘れられないエマはヨハンと両親の家で会うことにする。両親は長期休暇で留守にしていた。彼女は先に海辺のその家に入り、何気なく高校の卒業アルバムを見る。そして、その中に、ヘレナだけだはなく、グリーダとグニラの顔も見つける。これまでは、苗字が変わっているので気が付かなかったが、エマは殺された女性三人と、高校の頃に同じ学校にいたことを思い出す・・・

 

<感想など>

 

不幸な少年時代を送った男の社会への復讐劇であることは、時々挿入される男の独白で、最初から分かっている。従って、

「登場人物のうち誰かが意外な犯人ではないか。」

という心配をしないで読み進める。ページが進むにつれ、その男の独白の頻度と長さがどんどん増していき、犯人と殺された女性たちの接点が、明らかになっていく。

女性を狙った連続殺人事件であるが、犯人の悪夢のような体験を考えれば、何となく犯人に同情してしまう。もちろん、三人の女性を残虐に殺害することは許されることではないが、そこに至った犯人の心理は良く分かる。

「もし自分が犯人の立場だったら。」

と考えると、実行する、しないは別にして、同じような殺意を抱いていたと思う。

しかし、これほど、何もしない、もっと言わせてもらうと「無能な」警察が描かれることは珍しい。殺人事件の後、一応被害者の家族、友人、同僚に事情聴取が行われる。しかし、事件解決の糸口になるような情報は何も得られない。ところが、クヌタスが同じ人物に再度インタビューすると、重要な情報がどんどん出て来る。

「聞かれなかったから。重要だと思わなかったから。」

と尋問された人々は言う。つまり、警察が通り一遍の質問しかせず、質問された側も通り一遍の答えしかしないという構図である。しかし、本物の捜査とはこんなものかも知れない。無能さ、それに対する反省、徒労が描かれることが、この物語が妙に現実的な光を放っている原因であると思う。

このシリーズの特徴は、警察とクヌタス警視だけではなく、ジャーナリストのヨハン・ベリも事件解決の一端を担うということである。ヨハンと被害者の友人であるエマの情事が、警察の捜査と並行して描かれ、それが最後にひとつにまとまるという構成である。

 しかし、クヌタスは一応チームのまとめ役であるが、彼の独走はない。先に述べたジャーナリストのヨハンは別にしても、警察の同僚であるヤコブソンやキールゴルドが、皆知恵を持ち寄って事件を解決していく。この辺りの「集団劇」が、シューヴァル/ヴァールーの「マルティン・ベック」シリーズの伝統を受け継いでいるように思われる。

 ゴッドランドの風物の描写もさることながら、色々な人間がステレオタイプにならず、現実感を持って描かれていることに共感を覚えた。他人に勧められるシリーズである。

 

201512月)

 

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