週末の予定

 

夜明けの白樺林の中を散歩する。

 

同僚のカロラは、いつも夜遅くまでオフィスに残っていたが、木曜日だけは、

「今日は、『ヘア・デア・リンゲ、最終編』のテレビ放送があるから。早めに帰る。」

と言った。「ロード・オブ・ザ・リング」だ。僕も、三部作を全部、末娘のスミレと一緒に映画館で見た。三作とも長い映画だった。テレビではCMも入るので、八時から始まって真夜中までの放送だという。

「明日は眠いと思うわ。」

とカロラ。

DVDを買って少しずつ見ればいいのに。」

と彼女に言うと、

DVDはとっくに持ってるわよ。今日は何百万人という人と一緒に見て、感動を共有するところに意義があるのよ。」

と彼女は答えた。

「へえ、そんなもんですかね。」

 ホテルの食事にも飽きてきたので、今日は会社の近くのヴィックラートという小さな町の中華レストランで夕食を取ることにする。ビュフェット、つまりバイキング形式なのだが、僕は前菜と飯と野菜の他は、北京ダック以外には手を出さなかった。

食事を終えてレストランを出る。僕がドイツに着いて以来、二月としては珍しく天気が良かったが、その日は夕方から天気が崩れ、雨が降り出した。

部屋に戻りテレビを点けると「ロード・オブ・ザ・リング」をやっていた。何となく見てしまう。しかし、さすがに最後まで見る気力はなく、十時過ぎには眠ってしまった。

金曜日。朝起きると雨は止んでいるが、昨夜来激しい雨が降ったらしく、道はぬかるんでいる。それでもピョンピョン跳んで水溜りを避けながら三十分ほど歩く。

「週末は何するの?」

とオフィスの皆に尋ねられる。

「日曜日はヴッペルタールに行くつもり。」

と答えると、

「モノレールに乗りに行くの?」

と皆が聞く。その理由については後ほど述べることにする。

 その日の午後、一週間の仕事の進捗を話すためにデートレフとカロラとミーティングをした。その後帰ろうとすると、カロラが、

「ちょっと相談したいことがあるんだけど。」

と言ってきた。

「いいよ。」

と言って彼女の話を聞き始める。

 

これがドイツでは知らない人でも知っている、ヴッペルタールのモノレール。