目標、刺身定食

 

高級店の並ぶデュッセルドルフのケーニクスアレー。あちこちが工事中で通りにくい。

 

金曜日の夕方、僕はカロラと話をしている。オフィスの他の連中は皆、

「シェーネス・ヴォッヘネンデ!(楽しい週末を)」

と言って帰ってしまった。残っているのは、僕たちふたりだけ。彼女は自分の持っているプロジェクトの問題を次々と僕に相談し始めた。半分は愚痴。それが長かった。結局ふたりともオフィスを出たのは午後八時。朝七時過ぎにオフィスに来ていたので、延々十三時間も会社にいたことになる。

さすがに疲れた一日。しかし、明日から二日間休みであるのが嬉しい。先週の土曜日は補習校で書道の指導があったし、その前の日曜日にはピアノのミニコンサートがあった。つまり、ここのところ週末も結構忙しかったのだ。今週末、全ての時間を自分のために使えるというのは、何となく嬉しくて、ワクワクしてしまう。

ホテルのレストランで食事をした後、いつもより余分に、もう一杯ワインを「おかわり」した僕は、酔いが回ったのか十時過ぎには眠ってしまった。ホテルのバーでは、「常連」ということで、ワインを注文しても、バーテンダーのお兄さんが随分なみなみと注いでくれる。

土曜日の朝、目を覚ましてテレビをつけると、エジプトのムバラク大統領が遂に辞任したというニュースで持ち切りだった。今日は、午前中、デュッセルドルフに行ってみることにする。車でなら三十分もかからない距離だ。

七時ごろから三十分ほど歩く。水溜りが多いが、もうかなり明るくなっているので、水溜りに足を突っ込む心配はない。例によって、補強運動、シャワー、朝食を済ませる。ビジネス客は昨夜までに殆ど帰ってしまい、朝食時のレストランも、今朝は随分ひっそりとしている。駐車場に停まっている車も少ない。

朝食の後、ロンドンの家に電話をし、マユミと少し話す。一昨日は息子のワタルの誕生日だった。

「誕生日も、次の日も、ワタルは友達と飲みに出かけ、家にいなかったわ。」

とマユミが言った。大人になった息子や娘の誕生日は、皆そんなものなのかも。家族で誕生日のご馳走を食べていた時代が懐かしい。

午前中、二時間ほどキーボードを弾く。その後、十一時頃に車でデュッセルドルフへ向かう。一週間日本食を食べていないので、デュッセルドルフでの「目標」は、日本レストランで「刺身定食」を食べること。昔から日本人が多く住み、「日本人のコロニー」と呼ばれるデュッセルドルフには、日本食の店が何軒かあるのだ。

中央駅の立体駐車場に車を停め、そこから、例の「日本人通り」、「インマーマン・シュトラーセ」を通り、旧市街の商店街に入る。高級店の並ぶ、「ケーニクスアレー」を横切り、レストランや飲み屋の多い旧市街「アルトシュタット」に入る。そこを抜けるとライン河の畔に出た。

 

こちらはデュッセルドルフの旧市街。アルトシュタット。