亀岡へ
亀岡盆地。山に囲まれた静かな町。京都からJRで30分で行ける。(亀岡市HP)より。
先月、母の一番上の姉、僕の伯母が百二歳で亡くなった。伯母はエッセーを書く人。伯母の書いたエッセーを送ってきてもらったり、僕の書いた文を読んでもらったりしたので、僕が日本に帰ったとき何度か会っている。伯母は京都府の亀岡に住んでいた。市内ではなくて、山の中。昔行ったときは、亀岡駅から、山道をかなり車で走って、伯母の家に行った覚えがある。
母は、伯母の葬儀に参列できなかった。それで、今回、弔問のために、母と二人で、亀岡の伯母の家に行くことにした。伯母は亡くなったが、隣に息子さん夫婦(つまり僕の従兄)がお住まいなので、訪れることにしたのだ。
車しか交通手段がない。それで、僕はその日の朝、レンタカーを借りた。母を乗せ、ナビゲーションをセットし、家を出発する。京都から亀岡に行くには、まず五条通まで出て、そこから国道九号線を西に向かう。祇園祭も始まり、道は混んでいて、京都を抜けるだけで、四十五分くらいかかった。京都を出ると、道は「老いの坂」という峠道にさしかかり、カーブの多い道を時速四十キロで走って行く。
「昔、お祖父さんが、リヤカーでこの峠を越えはった。」
と母が突然言い出した。この「お祖父さん」とは、僕の祖父、母の父である。網代(あじろ)職人をしていた祖父は、材木を扱う仕事だったせいか、力が強かった。当時、伯母の家に持って行く荷物と子供だった母を荷台に乗せ、リヤカーを引いて、この峠を越えて京都から亀岡の伯母の家まで行ったとのこと。
「お祖父ちゃんはすごい!昔の人はすごい!」
亀岡市内に着いても、ナビには「残り十三キロ」と出ている。僕は、山に向かって車を走らせる。山はだんだん深くなり、すれ違いが出来ないような狭い道や、ヘアピンカーブが次々と現れる。
「お母ちゃん、ホントにこの道で合ってる?」
だんだん心配になってくる。道路標識にはこの先「能勢」と書かれている。能勢はもう大阪府である。間もなく、道が下りになり、ナビが「残りゼロ」になる。車を停めると、右側の家から、従兄のOさんが出てこられた。左側の丸い山にも、見覚えがある。祖父はリヤカーで亀岡に入った後、もう一つの峠を越えてここまで来たのだ。
僕は仏前にお参りをし、それから一時間半ほど、母とTさんと奥さんと四人で、伯母のことについて話した。嫁いできた伯母は、この土地で雑貨屋を始め、Oさんがそれを引き継いでコンビニにした。そのコンビニも数年前に廃業し、Oさんは今趣味のサイクリングをしているという。
三時にOさんの家を辞して、京都に向かう。帰りは「京都縦貫道」という高速を使う。京都市内は相変わらず混んでいた。京都の町を自分で運転するのはおそらく初めて。何時もは自転車かバス。何か変な気分。
丹波山地を走る「京都縦貫道」、今回初めて走った。