エピローグ
七月、四条界隈の鉾町では鉾の組立てが始まった。
今回も、日本にいる間にたくさんの人たちに会った。「大従兄弟姉妹会」のときに書いたが、普段海外に住んでいて、たまに帰国すると、
「お〜、モトが帰ってるのか。それなら一度会おう。」
そんな「特別感」がきっかけになって、皆が会う気持ちになることが多い。海外に住んでいることの一つのメリットだろう。
同級生や昔の同僚、従兄弟姉妹たちは、僕と同じくらいの年代。つまり、「現役とリタイヤの境目」である。多くの人が、どこまで現役で働いて、その後どうして生きていくかの決断を迫られている頃。富山に行ったとき、同級生で先輩のRさんが言った言葉が興味深い。
「『元気だから働ける』んじゃなくて『働けるから元気』なんや。俺はそう思う。」
「他の人を助ける」、「社会に貢献する」この気持ちが、僕たちの年齢になって、とても大切だと思う。ドイツで走り仲間であったWさんと会ったとき、中学と高校の卓球部の顧問をしていると言われた。最近は、部活の顧問を引き受ける先生が少なくなり、外部の方が顧問になることが多いという。
「若い人と一緒にいるのは、自分を若く保つ上でとてもいいことですよ。」
とWさん。まさに、「働けるから元気」のいい例だと思う。僕も日本語教師と、捨て馬保護センターのボランティアをしている。僕のような年齢になると、金儲けとは関係なく「他人様に役に立つことを何かする」このことがとても大切な気がする。
もうひとつ、同世代の人と話して思ったのは、
「誰もが病気を持っている。」
ということ。話した同世代の人のほとんどが、癌、心臓の病気、脳梗塞、そんな命に係わる病気を経験されていた。僕も、心臓の手術を二回、大腸がんの摘出をしている。でも、皆さん、それらの病気を克服されて、前と同じようにアクティブに暮らしておられる。病気はあったとしても、それを悔やんでみても仕方がないし、「出来ることを楽しむ」その姿勢が大切だと思った。
「大従兄弟姉妹会」の開催は、水曜日の正午だった。それに結構直前になってからの案内だったにも関わらず、多くの人が参加してくれた。これは、現役引退世代の強みであると思う。皆時間が自由になのだ。十年前にこの企画をやっていたら、まだフルタイムで働いている人が多かったので、こんな出席率は望めなかっただろう。
今回、このエッセーに書いた人のほかにも、色々な人に出会った。僕が帰国するに当たり、僕のために時間を割いて、会ってくださった皆様全員に、心からお礼を申し述べ、この旅行記を終わりたい。
<了>
ドイツに居たときの「走り仲間」と大阪梅田で一杯。