かしまし娘
三人娘がその夜送ってくれた写真。
日本滞在も後十日を切った。次の「イベント」は姪家族の訪問。七月十二日の土曜日、滋賀県に住む姪が、旦那と娘たちが母の家に来るという。姪には、小学二年生、四年生、中学二年生の三人の娘がいる。
「お昼ご飯、どうしよう。」
と母が僕に尋ねる。
「三人の子供たちの好きな物、何やろ。」
前章でも書いたが、僕は考えた後、
「パスタ・ミートソースにしよう。」
と提案した。金沢で、義母のために作ったことがまだ頭に残っていたのだ。
「ええ考えや。」
「僕がパスタを作るし、お母ちゃんはサラダ作って。」
役割分担も決まった。姪一家の来る前々日、僕はミートソースを大きな鍋に仕込んだ。二晩寝かせれば、味はもっと丸くなるだろう。
さて当日。姪の家族は午前十一時に到着。この前会ったのは、父の七回忌の法事の時。もう五年以上前だ。
「大きくなったねえ。」
一番上の娘は、すっかり背が伸びて、僕と同じくらいの背丈になっている。お腹が減っているかと聞くと、全員が「うん」とのこと。僕は二種類のパスタを茹でて、ミートソースを温め始める。三十分後、二パッケージのパスタと、大鍋のミートソースがほぼ空に。
学校の教師をやっていて都合の良いこと、それは普段から子供たちと話しているので、こんなことを言えばこんな反応が返ってくると、予想できること。だから子供たちとの会話もスムーズ。娘が三人寄ると、本当にかしましい。
姪は、時々、娘たちのピアノの発表会のビデオを、SNSに上げていた。それで、僕は彼女たちがピアノを弾くことを知っていた。特に長女は、僕の目からしても、結構ピアノの才能があると思う。
「ピアノの楽譜持ってきてね。」
と僕は、前日姪にメールをしておいた。
昼食の後、皆で二階に上がって、僕の部屋にあるピアノで、順番に腕を披露。長女は「ショパンのノクターン」。僕もバッハを一曲。それから皆が争って弾きだし、「大音楽会」が始まった。その後、子供たちは二階で遊び、大人たちは階下で話している。
姪一家が帰る時、子供たちは角を曲がって見えなくなるまで、手を振ってくれた。
「ありがとう。楽しかったよ。」
と言いながら。僕と母は顔を見合わせて笑った。二人ともホッとしていた。
僕の若い頃関西で人気のあった三人娘の漫才師「かしまし娘」。