ニュー・ノーマル

 

七月になってやっと、英国でも、交通機関や店内でマスク着用が義務付けられるようになった。(The Sun紙より)

 

「果たして、社会は、世界は、コロナ禍の前のように戻るのだろうか。」

僕は考える。僕の結論的は「戻らない」というものである。今回のロックダウンや色々な対策は、社会に大きな変革をもたらした。そして、その中で、結果的に良かった物は残っていくと思う。例えば、オフィスワーカーは将来、月曜日から金曜日まで、びっちりとオフィスで働かないと思う。「ノーマル」には戻らず、「ニュー・ノーマル」が待っていると、予言する人は多い。

「こんな経験、戦争中以来やわ。」

と日本の母が言った。比較的、日常生活が維持され、緊急事態制限は出されたものの、短期間であった日本でさえ、母が戦争と比較したくらいである。三カ月の間、社会活動がピッタリと止まってしまった英国や、ヨーロッパ諸国は、もっと国民の行動が制約された。それが解除されつつある今感じることは、

「経済というのは、ひとつの大きな流れであり、一部だけでは機能しない。」

と言うこと。例えば、小売店の営業だけが再開されても、最初の数週間は、どの店もガラガラ状態が続いた。やはり、自分の働いている職場とか、小売店と混在する飲食店とか、安全な公共交通機関とか、そう言うものが全体的に立ち上がっていかないと、人々は買い物に行かないのである。 

街に人と車が戻ってきたが、僕の生徒のTさんは、

「あの静かな時期がちょっと懐かしいわね。」

と言う。確かに、車が消えたロンドン、それはそれなりに良かった。あんな光景は、今後二度と見ることはないだろう。

 現在、二〇二〇年七月も終わろうとしている。こうして、過去を振り返るような形で書いているが、もちろん、コロナ禍は終わったわけではない。ヨーロッパ諸国では感染者、死者ともに少なくなり、日常生活が戻りつつある。しかし、世界全体での感染者は、日に日に増えていっている。かつては感染者数で米国がトップ、英国が二番だったが、その間に、ブラジル、ペルー、メキシコ、チリなどの中南米の国が割って入り、インドやパキスタンでも患者が増えている。優等生であった日本まで、感染が広がっている。また、社会活動の再開に伴い、いわゆる「第二波」も懸念される。

 そんな中で、自分の国での波が一応治まったということで、「終わった」と印象付けるような書き方は良くないし、自分勝手であると言うことは分かっている。しかし、コロナ禍で多くの死者を出した国のひとつであり、最も厳しくて長い「ロックダウン」が行われた英国で、その間、人々がどんな生活を送っていたのか、日本の皆さんにも知っていただきたくて、このシリーズを書いた。こちらの様子も報道されていると思うので、ちょっと視点を変えるために、今回も「馬牧場日記」と題し、馬の話題も入れさせていただいた。実際、このような時期、毎日馬の相手を出来たことは、精神衛生にとてもよかったと思う。馬たちに感謝したい。

 

週末Zoomで家族顔合せ。シンガポールの息子夫婦も参加できるのがいい。これもコロナ禍の後始まったニュー・ノーマル。