回転寿司デビュー

 

回転寿司デビューを果たした継母と。また七十五日、寿命が延びた。

 

僕には、母が二人いる。父が最初に結婚し僕を産んだ生母、父がその後離婚し新たに母になった継母。父はもう十年以上前に他界したが、二人の母は、今年共に九十四歳で、健康に一人暮らしをしている。前章でふざけて、日本に帰る目的は「銭湯に入ること」と言ったが、本当の目的はは二人の母の様子を見て、一緒に過ごすことである。その二人の母にまつわる、エピソードを紹介してみたい。

 京都に帰ったとき、僕は生母の家の二階に起居しており、いつも一緒に食事をしている。継母とは、帰省中に数回会って、一度は継母の行きたいレストランで一緒に昼食を食べている。

「お母さん、来週、また一回ランチにいかへん?どこがええ?」

「私、これまで、『回転寿司』ちゅうところに行ったことがないんや。いっぺん連れてってえな。」

「ええの?そんな安い所で。」

これまで、継母は、フランス料理や、懐石料理など、結構気も張るし、値も張る場所がご所望だった。今回はずいぶん安上がり。

 数日後、僕は午後一時半に西大路わら天神前の「H寿司」を予約し、一時に継母の家に迎えに行った。継母はコートを着て、杖を突いて、玄関で待っていた。ウーバーが直ぐ来てくれて、十五分後には西大路の「H寿司」へ。僕も最近、日本の回転寿司に来たことがないので、その「技術革新」には驚かされる。スマホの予約確認メールのQRコードをスキャンすると、座席表がプリントされ、その番号の座席に行く。注文はタッチスクリーン。次々と寿司の乗った皿がコンベアで到着する。最後に座席表のQRコードをスキャンしてもらいお会計をする。

「一言も喋らんでもええ。」

「職人さん、どこにいたはるんやろ。」

と、継母。見た限り。フロアには、お客さんしか見えない。職人さんたちは、別室の「閉じた空間」で、画面に表示される指示を見て、モクモクと握っておられるのであろう。

「何か、人間味が薄いなあ。」「でも、味はおいしいやん。」

確かに、味は悪くない。母は、初めて来た回転寿司の「メカ」に圧倒されていた。

「上手にしたるなあ。」

一皿百十円と、百八十円なので、年寄りがふたりどれだけ食べても、お勘定は知れている。結局、往復のウーバー代の方高くなってしまった。

 継母と「回転寿司」に行ったことを、姪と妻にメールで伝えると、

「おばちゃん、いよいよ回転寿司デビュー!おめでとう!」

「この世の中に、一度も回転寿司に行ったことがない人間がいるなんて信じられない!」

 

弘法さんのあとSちゃんと昼飲み。内緒で「馬刺し」食べちゃった。

 

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