二つのマラソン

 

今宮神社の赤い鳥居をくぐる先頭ランナー。ダントツで速い。 

 

 京都に着いた翌々日の日曜日、「京都マラソン」があった。家のすぐ近くを通るので、見に行くことにした。北大路通を走ってきたランナーが、左に曲がり、今宮神社の鳥居を潜り、正面のオレンジ色の今宮神社に向かう。その角でランナーを待つ。今宮神社は、境内で売られている「あぶりもち」が有名。僕の家族も、京都に来た時は、よく食べに行っている。同じ場所で待っている外国人の男性に話しかける。高価な一眼レフを持っている。

「誰かきみの友だち走ってるの?」

彼は、自分が、フランス人で、プロのスポーツ写真家だと言った。そして、自分の作品をスマホで見せてくれた。明瞭な背景と、動きのあるランナーが組み合わさった、奇妙な、それでいて、美しい写真だった。

 白バイに先導された男性ランナーが通り過ぎる。その後、三分近く誰も来ない。

「ダントツや。」

走り方からして、先頭は、五千メートルを十五分台前半で走っているのが分かる。彼が通り過ぎた後、神社の方から、太鼓の音が聞こえてきた。そちらの方へ行く。神社の門の下には、揃いの法被を着た、二十人ほどの若者がいて、和太鼓を叩いている。その前が給水所になっていて、ランナーが次々水を取っていく。暖かく、気温は既に十五度くらいある。見ている人にはちょうどいいが、走っている人にはちょっと厳しいコンディション。

 僕の心は少し痛む。昔は自分も走れたのに。今はとても無理。年齢も重ねたし、病気もしたし。でも、もう一度、あんなふうに、風のように走ってみたい。

 ところが、僕の同世代の友人に、すごいヤツがいた。彼は、大学の陸上部の数年後輩、もう六十代半ばである。そして、彼は僕と同じく、一度狭心症を患い、心臓にステントを入れている。そのHさんが、翌週の「大阪マラソン」に挑戦するという。京阪神や名古屋に住む、元陸上部有志で「Hくん応援団」が組織され、その後、「ご苦労さん会」が開かれることになった。

 次の日曜日の午後、僕は、鶴橋で行われる「ご苦労さん会」に参加するために、大阪に向かった。家から京阪電車の終点、「出町柳」駅まで鴨川沿いを歩く。ボカボカ陽気で、歩いていると汗ばむ。

「今日も、マラソン走るのは、ちょっと辛い天気やな。」

そう思う。京阪特急に乗って大阪に向かう。プレミアムシートという、グリーン車みたいな座席があり、話のタネに五百円払って乗ってみる。京橋で降りて、JR環状線に乗り換える。大阪城公園のところで、線路が大阪マラソンのコースと交差する。まだ、多くのランナーたちが、ゴールを目指して、走り、歩いていた。

「ご苦労さんです。」

 

選手の応援に和太鼓を打つ若者たち。

 

<次へ> <戻る>