始めまして?

 

中国の新幹線「高鉄」で深圳に向かう。

 

「これから、『高鉄』(ガオティエ)に乗るために、西九龍駅に行きましょう。」

「あのう、他のお客さんは?」

「今日は、あなた一人です。」

何と、彼は僕のプライベートガイドだったのだ。最初から一対一のツアーなのか、他に参加者がなくて結果的にそうなったのか、それは分からないが。

僕とEさんは、ホテルの前からタクシーで「高鉄」の駅に向かった。「高鉄」というのは「中国高速鉄路」の略、中国の新幹線である。香港では「西九龍駅」から発着している。タクシーの中で彼は携帯を使って切符を手配し、僕にビザ申請用のカードを渡した。

「ここと、ここに記入しておいてね。後は、僕が適当に書いとくから。」

国境で、「百四十四時間以内滞在」のビザが取れることを、僕は知っていた。

 西九龍駅に着くと、Eさんは、慣れた様子で、僕のビザを申請し、それを受け取ると、次はパスポート検査に向かった。香港は特別区なので、中国本土に入るときは、香港側の出国手続き、中国側の入国手続きをしなくてはいけない。駅は結構混んでいた。

「もうすぐ春節ですからね。」

Eさん。来週の火曜日には旧正月のお祭り「春運」が始まる。帰省ラッシュは既に始まっていた。

 荷物検査を受けて、僕たちは無事、九時半発の列車に乗った。香港から深圳までは、何と十一分である。そのために、すごく厳重な検査を何回も受けねばならない。中国政府は、「高鉄」を日本の新幹線を凌ぐと宣伝している。確かに駅は立派だが、列車自体は新幹線より遥かにショボい。座席はリクライニングできないし。座り心地も悪い。このツアーは英語のはずだったのだが、Eさんは既に僕が中国語を話すことに気付いていた。その結果、彼の説明のうち英語はだんだん少なくなり、中国語が徐々に増えてきている。(勉強になるからいっか。)

 深圳北駅に着き、そこから地下鉄で移動する。町を歩いている人、地下鉄に乗っている人、特に香港との違いは感じない。大きな違いは、深圳の建物がどれも新しいこと、走っている車の殆どが電気自動車であること、空が青いこと。地下鉄を降りて、「蓮花山公園」に行った。標高百メートルほどの丘で、そこから深圳の町が一望できるという。

「きついなあ。」

眩暈とぎっくり腰で、ここ一か月以上まともに歩いていない僕には、その百メートルがこたえる。しかし、頂上からの眺めは最高。鳥の羽を広げたような、中心街が見える。展望台の周囲は、赤い花ツツジに埋め尽くされている。

 それから、僕たちはもう一つの「高鉄」の駅で「福田」の近くのレストランで「飲茶」を食べた。Eさんにお願いして、老師に直接、場所を説明してもらった。彼女は別の駅の方に行ってしまったとのこと。三十分後、近くの地下鉄の駅で会うことになった。

「お会いしたら、『初めまして』って言うのかな?」

 

蓮花山公園から見下ろす深圳の中心街。全てが近代的。

 

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