深圳へ

 

安くて、美味くて、コスパ最高の晩ご飯。

 

 夕方になり、ボチボチ夕飯の段取りを考える時間になってきた。僕は、英国では滅多に外食をしない人。特に、自分一人でレストランに行って食べるのは、余り好きではない。何となく時間を持て余してしまう。ホテルの近くを歩いていると、一軒の庶民的な「麺食堂」があった。そこの良い点は、全てのメニューの写真が壁に貼られており、指をさすだけで、注文できそうなところ。素朴で、「孤独のグルメ」で松重豊さんが選びそうな店。

「ここにしょう。」

僕は「肥仔記麺家」という、朱色と金色の看板のかかった店に入った。

麺の種類、トッピングが選べるらしい。僕は細い湯麺、白い魚の団子、魚の皮の揚げ物、青菜の炒め物を注文。アルコールがないので、豆乳を注文する。ウェイトレスのお姉さんは、英語も北京語もダメ。しかし、壁の写真を指し示すだけど、事足りた。

 結構美味しかった。特に、魚の皮の揚げ物は、パリパリして最高。

「これ、ビールのアテにもってこいやなあ。ああ、ビールが欲しい!」

青菜は、オイスターソースを掛けて食べるのが定番。二十分ほどで食べ終えて、お勘定をする。六十五香港ドル。後で換算すると、七ポンド。日本円で千二百円ほど。安くて美味しくて、コスパは最高。

 携帯を見ると、明日のガイド、Eさんから、「八時半にホテルに迎えに行くからね」という、メッセージが入っていた。明日、香港の隣町、深圳(しんせん、中国語ではシェンジェン)に行くのであるが、僕は、「深圳日帰りツアー」に参加していた。香港はビザなしで入れるが、深圳は中華人民共和国のビザが必要。それをオンラインで取ろうとしたのだが、メッチャ複雑だった。その時、ツアーに参加すれば、手続きは全て添乗員がやってくれると聞いた。それで、僕は「深圳日帰りツアー」に申し込んだのだった。

 では、どうしてそこまでして、深圳に行くのかということになる。実は、深圳に会いたい人がいるのだ。Y老師。「老師(ラオシュ)」とは、中国語で「先生」の意味。Y老師は、三十代の女性である。僕は、三年以上、彼女からオンラインで中国語レッスンを受けていた。今回、せっかく香港に三日間いるのだから、一日は隣の深圳にまで足を伸ばし、Y老師に会おう決めたのだった。ツアーだが、昼食の時間が二時間取ってある。そのレストランに、Y老師に来ていただこうというのが計画だった。ガイドのEさんに、昼食の時間と場所を尋ねると、すぐさま返事が来た。その時間と場所をY老師にも、中国のメッセージアプリ「微信」(ウィチャット)で伝える。

 八時間時差のある場所での、最初の夜だったが、結構よく眠れた。翌朝七時半までグッスリ眠って、八時半ごろにロビーに降りていく。僕の名前を書いた紙を持った三十歳くらいの男性がいた。ガイドのEさんだった。僕は、その時まで、他のお客さんと一緒に、観光バスで深圳に向かうものと思っていた。しかし・・・

 

晩ご飯を食べた庶民的なお店。

 

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