季節はずれのリゾートの由緒正しいホテル

 

これが世界遺産のダーラム大聖堂。まさに重厚。

 

三十分ほどカレッジの中を見学させてもらった後で、僕達は大聖堂へ行った。大聖堂は街を形作っている丘の一番高い場所に立っている。薄茶色の石で作られた大聖堂の前は広場になっていて、そこに面して大学の「学生組合」(生協のようなもの)と図書館があった。大聖堂は外見も立派だが、中も実にしっとりとしていて、これまで英国で見た教会の中で、一二を争うものだった。さすが世界遺産。

大聖堂から広場を挟んで向かい側に城がある。この城もひとつの「カレッジ」になっているとのこと。

「ここのカレッジ、とっても人気があるのよね。」

とスミレが言った。その後、マーケット広場にあるスーパーで、洗剤や「学生の必需品」つまり酒を買い、シャトルバスで駐車場に戻った。

 今晩泊まる場所はダーラムではない。妻が宿を手配したのだが、その日はダーラムのホテルは何処も満員で取れなかったのだ。(子供を送ってきた親達で一杯なのだ。)それで、二十キロほど離れた海辺の、ハートルプールという町に僕等は宿を取っていた。

ちょうど暗くなり始める頃にハートルプールに着いた。海辺のリゾートという感じ。しかし、季節はずれなので、街全体がひっそりと静まりかえっている。

ホテルが見つからないので、マユミに客待ちをしているタクシーの運転手に聞いてきてくれるように頼む。マユミが大笑いしながら戻ってきた。

「ここよ。」

僕達は、ちょうどホテルの前に停まっていたのだった。

 その夜泊まったホテルは、「三つ星」ながら、とても「由緒正しい」感じがするホテルだった。階段の手すりは彫刻の施された黒い木で出来ていて、磨き込まれて光沢を放っている。部屋の調度も濃い色のニスを塗った木で統一されている。極めつけが風呂場の金具。エルキュール・ポアロの家にあるような(行ったことはないが)歴史を感じさせる蛇口。もちろん、それもピカピカに磨き上げられている。

 パソコンで友達との交信に忙しいポヨ子を残して、マユミと夕闇の迫る街へ出てみる。ホテルの前は、駅前のメインストリートのはずなのだが、人通りはまばらで、何となく「ゴーストタウン」という言葉が浮かんでくる。店やレストランも閉まっている。おそらく、夏の間は賑やかなのだろうが。

ホテルに戻り、バーでふたりともビールを飲む。こちらは良い天気だが、南の方は大雨らしい。ゴルフの「ライダーズ・カップ」で、タイガー・ウッズが大雨の中でボールを打っているのがテレビの画面に写っている。その夜、ホテルでパーティーがあるとのこと。スーツを着た男性や、気合の入った格好をした女性が次々とバーに現れる。

夕食にタイ料理を食いに行った。ほとんどのレストランが休業中で、あまり選択の余地はない。三人で腹一杯食ったが、驚くほど安かった。

由緒正しいホテルの由緒正しいトイレット。

 

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