とんでもない言い間違え

 

四日間毎食がこの弁当。最後はさすがに飽きた。

 

外国の映画やテレビでの刑務所の風景。よくあるのが食事のシーン。独房のドアの下が開いて、食事が押し込まれる。それを受刑者は引っ張り込んで、食べ始める。検疫施設、日航ホテルも同じようなもの。朝、昼、夕方、一日に三度、部屋のベルが鳴る。ドアを開けると、コンビニ弁当とお茶のペットボトルがドアの前に置かれている。僕はそれを引っ張り込んで、窓際のテーブルで食べ始める。食べ終わった弁当箱は、外に出しておく。廊下には制服を着たガードマンが二十四時間詰めている。

「こんな、刑務所みたいな体験、すると思わんかったなあ。」

と自分でも、思わず笑ってしまう。しかし、部屋から一歩も出られない身。余り腹も空かず、三食全部は食べられなかった。

三日間、外に出られないし、誰とも会わないが、携帯とインターネットで外部につながっているので、孤独感はない。友人や家族と、スカイプやその他のアプリを使って話せたし、何回かオンラインで日本語のレッスンもした。最近習っている中国語の勉強もじっくりできた。その意味では、有意義に過ごせたと思う。寒波が日本を襲っているという。しかし、ホテルの一室に缶詰めになっている身には、実感が湧かない。

検疫施設滞在も、三日目の夜を迎え、上手く行けば翌日退所ということになった。夜係官より電話があり、段取りについて話を聞く。朝七時に検査のための唾液を提出し、結果が分かるのが昼頃。陰性の場合は、係員の誘導で外に出られるという。三日前に陰性だったし、その後、誰とも接触していない。明日は出られると確信し、夕食の弁当を食べ始める。いつもより美味しく感じる。夕食後、荷造りを始める。

翌朝、朝七時に唾液を試験管に入れ、取りに来た係員に渡す。その後は待つしかない。また、中国語の勉強をしながら時間を過ごす。何となく落ち着かないが、ひたすら待つだけだ。

十一時ごろ、電話がかかってきた。思ったより早い。若い女性の声。

「川合さ〜ん、検査結果出ました。陽性でした。」

「ガ〜ン、何でやねん、これからどうなるねん。」

と、一瞬クラッと来る。

「すみませ〜ん、言い間違えました。陰性です。」

と、若い女性の屈託のない声。一番大事なこと、言い間違えるかなあ。

 三十分後、僕は女性係官に案内され、ホテルの外に出た。

「これから、何かあったら、どこに連絡すればいいんですか?」

とその女性に尋ねる。

「これからは、お住いの地域の保健所の担当になりますので、そちらの担当にご連絡ください。」

とのこと。僕はホテルの隣のレンタカー会社で、予約していた車を取り、京都に向かった。

 

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