コーンウォール名物

 

海辺に建つ、かつての錫鉱山の跡。ここから海底にトンネルが掘られた。(Geographical Magazineより)

 

さて、ここで、コーンウォールについて少し紹介したい。英国の地図を見ると、グレート・ブリテン島の左下に、陸地が矢尻のような形で大西洋に突き出ている。それがコーンウォール半島である。コーンウォールは長年、鉱業と漁業で栄えた。銅、錫、砒素などが産出され、その産出量は、一時世界の半分を占めるものであったという。当時は、銅や錫が高価で取引され、多少のコストをかけて掘っても、十分に採算が取れたわけだ。海底とか、かなりヤバいところにも、トンネルが掘り進められた。しかし、十九世紀後半から、二十世紀にかけ、第三世界で大量に産出された銅や錫が輸入されるようになり、銅や錫の価格が暴落する。多くの鉱山が廃業に追い込まれ、二十世紀の終わりまでに、コーンウォールでの鉱業は完全に姿を消した。日本の石炭産業が辿った道と似ている。そして、掘られたトンネルは・・・そのまま放置されたのである。

二十年前、僕が初めてコーンウォールを訪れたとき、友人のロザリーとマイケルの家にお世話になった。ロザリーは元同僚で、ロンドンに住んでいたが、コーンウォールで不動産を購入、貸別荘業を始めた。その初めての夏に、僕と息子が彼らを訪れたわけだ。

「コーンウォールで家を買ったり、建てたりするときは入念に地下を調査しなくてはいけないの。」

とロザリーが言った。

「どうして?」

「コーンウォールじゃあ、無数の鉱山のトンネルがあちこちに掘られたでしょ。その穴が突然崩れて、地面が陥没し、建っていた家が潰れるって、よくあるのよ。」

ボーリングとか、超音波による調査をして、下にトンネルがないのを確かめてから、建物を作るらしい。そのロザリーもご主人も、鬼籍に入られてしまった。時代の流れを感じる。

 コーンウォールのもう一つの産業は漁業であった。今では乱獲が祟って、昔のように魚が獲れないらしいが。別荘に置いてあった「コーンウォールの歴史を写真で辿る」という本には、網の中に、山ほど魚が掛かっている写真が何枚もあった。その漁業のお陰で、僕らが今回、刺身や、新鮮な魚を食べることができるのであるが。

 コーンウォールの形容詞は「コーニッシュ」。英国には「コーニッシュ何とか」という食べ物が幾つかある。つまり、コーンウォールから来たもの。その代表が、「コーニッシュパスティ」だろう。「パスティ」とはウィキペディアによると

「パスティはパイとは異なり、通常丸い平面のペイストリーに具を置いて、折り曲げて包み、縁に折り目をつけ閉じる。この結果、半円形になる。伝統的なコーニッシュパスティは牛肉、薄切りジャガイモ、ルタバガ(??)、およびタマネギを具とし、焼いて作る。様々なフィリングのパスティが販売されている。」

とある。食べたことがなかったが、せっかくだからと、今回初めて食べてみた。典型的な「英国の味」。大きさの割にはボリュームがあり、一個食べれば、昼ご飯はそれだけで十分という感じ。

 

コーニッシュパスティ。バターがたっぶりで満腹感を得られる。(Food Manufactureウェッブサイトより)

 

<次へ> <戻る>