サンデー・ウォーキング

 

たまに誰かと出会うことはあるが、海岸沿いのトレッキングは「ソーシャルディスタンシング」は最高の場所。

 

僕の家族だが、「ロックダウン」が解除されてから、「狂ったように」トレッキングをやった。買い物と散歩以外の外出禁止が解かれた後、初めての日曜日、僕たち夫婦と、娘たち、友人のVさんで、久しぶりにトレッキングに出掛けた。野原や林の中を四時間ほど歩き、途中でピクニック。

「自然の中を歩くって、何て気持ちがええねんやろ。」

と、しみじみ思った。「ロックダウン」の反動か、僕たちはハイキング、トレッキングの魅力にとりつかれてしまった。日曜日になると、僕と妻と娘は(どちらか一方のときもあったし、二人のときもあった)近場の、ハートフォードシャーのコースを見つけてはトレッキングに出掛けた。幸い今年の夏は、天気も良く、暖かくて、殆ど毎日曜日、歩くことが出来た。

昨年のクリスマス、僕と妻は、アウトドア派のVさんから、「ハートフォードシャー、トレッキングコース・ベスト・五十」なる本をプレゼントされた。今年の夏は、そこに出ているコースを、一つずつ潰して行ったのだ。これまで十二、三歩いたと思う。

僕の住んでいる、英国のハートフォードシャーは、高い山はないが、なだらかな丘陵地帯が続いている。牧場あり、森あり、湖ありで、歩くことを楽しむことができる場所。唯一の不満は、

「ハートフォードシャーはええ所なんやけど、難を言うと、海から遠い。」

ということだった。水辺を歩くというのは気持ちの良いもの。真夏の暑い日、僕たちは、運河や川の畔をよく歩いた。でも、何と言っても、海の傍のトレッキングというのはまた格別。コーンウォールが、今年の休暇の目的地に選ばれた理由だが、「海岸に沿ってトレッキングできる」という点は大きい。ぬかりのないスミレは、「コーンウォール、トレッキングコース・ベスト・五十」なる本を「アマゾン」で買って、持って来ていた。

 コーンウォールに着いた日は素晴らしい天気だった。海はコバルトブルー。昼過ぎに着いた僕たちは、早速海岸を歩いた。

「ホンマ、海辺を歩くと命の洗濯になるわ。」

僕は妻に言った。

 翌日は、暑い雲が垂れこめた日だった。しかし、僕たちは、「ナショナル・トラスト」の管理する海岸を歩いた。(「ナショナル・トラスト」については後の章で詳しく述べたいと思う。)天気が悪いと、海の色が濃い翡翠色になって、白い波がそこに繊細な模様を作り、それはそれで美しい。

「海岸のコースだと、道を間違える心配がなくていいね。」

とミドリが言った。ハートフォードシャーを歩いているとき、大抵はミドリがガイドブックを見ながら、道案内をしてくれる。しかし、特に目印もない田舎を歩いているとき、よく道に迷ったし、道を間違えた。完全に間違え、翌週に再挑戦ということもあった。海岸を歩いているとそれがない。確かに良いことだ。

 

曇り空の海の色も、それなりに美しい。ペーター・ブリューゲルの絵のよう。

 

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